借金の消滅時効の援用とは?借金にも時効があります。

債務整理入門

金融業者への借金返済が滞り、長期間放置した場合には、元金や未払いの利息だけではなく、返済の遅れている期間に応じた遅延損害金を加えて返済することになります。

そのため、貸金業者から長期間放置していた借金の督促書が届いた借り主は、その請求額にびっくりしてしまい、慌てて連絡して、請求された借金を返済してしまうかもしれません。

しかし、このような性急な対応は、得策ではありません。一度立ち止まって状況を確認した方がよいでしょう。なぜなら、長期間支払をしないまま放置したケースでは借金が時効により消滅していることを主張できる場合があるからです。

今回は、長期間返済しないまま放置していた借金の消滅時効について解説します。

1.借金の消滅時効

1−1.時効とは

時効という言葉を耳にしたことはないでしょうか。

時効とは、時の経過により、もともとは存在しない権利を発生させたり、逆に、もともと存在していた権利を消滅させたりする制度です。

たとえば、購入した土地の一部が実は他人の土地であった場合、その土地の上に自分名義の家を建てて自分の土地のような態度で(例えば、土地の固定資産税を支払続けたというような事情があるとき)20年以上経過すれば、もともとは他人の土地であった敷地の一部は、時効により所有権を取得できることになります。
これを取得時効といいます。

他方、たとえば、詐欺の被害者が、加害者に対して、その損害の賠償を求めることなく3年を経過してしまえば、時効により、もはや被害者は加害者に対して損害賠償を請求できなくなります。

これを消滅時効といいます。

1−2.借金の返済を求める権利は消滅時効にかかる

貸金業者が借金の返済を請求できる権利は、先ほどの詐欺の被害者の損害賠償請求権のように、特定の人物に特定の内容の行為を求める権利(債権)であり、消滅時効にかかります。

このことは、お金を借りた側から見れば、一定期間の経過により、借金を返済する義務が時効消滅することを意味します。

1−3.借金の消滅時効の期間は最長で10年間

それでは、借金返済の義務は、どれくらいの期間の経過により、時効となり消滅するのでしょうか。また、その期間は、いつからカウントされるのでしょうか。

まず、消滅時効の期間については、権利の性質・種類等に応じて、法律で個別に規定されています。
借金の返済を求める権利は、一般的な民事債権として、10年の消滅時効にかかることになります(民法第167条第1項)。

ただし、消費者金融からの借金のように当事者の一方が株式会社などの「商人」である場合には、消滅時効の期間は商事取引の迅速性を図る趣旨から5年とされています(商法第522条)。

したがって、貸金業者からの借金の消滅時効の期間は、通常5年であると考えてよいでしょう。

もっとも、たとえば、信用金庫や住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)は営利を目的とする会社ではない、すなわち商人ではない、と考えられているため、信用金庫や住宅金融支援機構からの借金の消滅時効期間は10年となります。

そして、借金の消滅時効の期間は、「権利を行使することのできる時」からカウント(起算)されることになります。

なお、裁判により借金の返済を命じる判決が確定した場合には、その借金返済請求権の時効は、もともとの時効期間が10年未満の場合であっても裁判の確定した日に弁済期が到来していれば時効期間は確定日から10年となります(民法第174条の2)。

2.消滅時効は援用しなければ効力を発揮しない

2−1.時効の援用とは

消滅時効による借金の返済義務の消滅は、債務者による時効の援用により、はじめて、その効力を発揮します。

ここでの「時効の援用」とは、債務者が債権者に対して時効による利益を受けると主張することです。

2−1.時効の援用はできなくなることがある?

時効の援用は、基本的に、時効完成後であれば、いつでも可能です。

しかし、債務者が時効の完成を知っていながら時効を援用して債務を免れることをいさぎよしとしない場合には、時効を援用しないで、「時効の利益を放棄」することができます(民法第146条)。

時効利益の放棄と異なりよく問題となるのは、時効の完成を借り主が知らないで弁済したり、弁済までに至らなくても債務のあることを認めた場合です。このような場合には、時効の完成を知らないので、「時効の利益を放棄」したとは言えません。

それでは、後になって時効の援用をすることはできるのでしょうか?

結論を言えば、裁判所は後の援用を認めないのが通常です。時効の援用をすることなく、債務者が時効期間の経過していることに気づかないで借金を返済したような場合には、その返済は法律上有効であり、もはや債務者は返したお金を債権者から返してもらうことはできないのです。

これを「時効援用権の喪失」と言い、「信義則」に基づくものだと説明されます。債務者が時効を援用することなく借金を返済したことに対して債権者の信頼を保護するため、もはや、時効を援用することはできないという話は債権者の立場になれば理解できると思います。

そうしますと、時効完成後の一部弁済などの場合に、個別の事情を踏まえて、例外的に時効の援用が許されることもあり得ます。

例えば、すでに時効が完成していたのに貸金業者が借り主を騙してまだ時効が完成していないようなことを言って一部弁済させたようなケースでは、借り主側に「信義則違反がない」と考えられので、時効の援用を認めても良いのではないでしょうか。

また、時効完成後に貸金業者が借り主の自宅を訪問して激しい取立行為をしたため、やむなく債務者が1000円程度の返済を行ったような場合にも、債務者側に「信義則違反がない」と言えるので、なお、時効を援用することは許される可能性があります。

3.消滅時効の中断

3−1.消滅時効の中断とは

消滅時効の中断とは、法律の定める特定の場合には、それまでに経過した時効の期間をリセットした上、その事情の終了した時から、改めて時効の期間をゼロからカウント(起算)する制度です。

3−2.消滅時効の中断事由

現行民法上、時効の中断事由は、①請求、②差押え、仮差押え又は仮処分、③承認の3つに大別されます(民法第147条)。このうち、典型的な中断事由である、請求と承認について説明します。

時効の中断事由となる請求とは、裁判上の請求であると理解されており、その典型は、訴えの提起です。

たとえば、消費者金融業者が債務者の最後の約定返済日から5年経過する1ヶ月前に裁判所に訴状を提出して訴えを提起すれば、時効期間の進行は中断することになり、仮に判決まで4ヶ月を費やした場合でも、借金の返済義務は時効により消滅することはありません。

次に、承認とは、債務者が債権者に対して権利の存在を認めることです。

借金の返済義務に関していえば、たとえば債務者が債務確認書にサインすれば、まさに借金の返済義務が存在することを認めたと言えます。

また、借金の一部でも返済すれば、それも借金の返済義務を前提とする行為ですから承認に当たります。

そのため、一部でも借金の返済を行えば、借金の消滅時効の期間は、その都度、一旦リセットされて、またゼロから開始されるのです。

4.民法改正による消滅時効のルール変更

最後に、2020年4月1日施行される改正民法において、従来の消滅時効に関するルールは大きく変更されました。以下、その改正点の一部について、簡単に触れておきます。

4−1.消滅時効の起算点に関するルールの変更

まず、現在の民法では、消滅時効は「権利を行使することができる時」から進行すると規定されています(民法第166条第1項)。時効期間は債権の種類・性質等により、1年、2年、3年、5年、10年と様々です。

この点が、改正民法では、「権利を行使することができる時から10年」と「権利を行使することができることを知った時から5年」とを比べていずれか早い方の経過により時効は完成すると変更されました。時効期間は10年又は5年となります。

この変更により、たとえば、信用金庫からの借金の返済を求める権利については、先に説明したとおり、従来は約定返済日より10年の経過により時効は完成することになるところ、改正民法では、権利を行使することができることを知った時から5年すなわち約定返済日より5年の経過により消滅時効は完成することになります。

4−2.時効の中断・完成の停止に関するルールの整理

次に、現行民法における時効の中断・完成の停止に関するルールは、改正民法では大幅に変更されることになりました。

改正民法は、従前の時効中断・完成停止の効果に応じて、時効の完成を猶予する部分については「時効完成猶予事由」、時効期間のカウントをリセットする部分は「更新事由」とすることにより、時効の中断・完成の停止に関するルールを整理し直しました。

たとえば、従前は時効の中断事由とされた「債務の承認」は、時効期間のカウントをリセットする「更新事由」となりました。

また、従前は時効完成の停止とされた「催告」(裁判外の請求)については、催告がなされてから6ヶ月間、時効期間のカウントを停止させて、時効の完成を猶予する「時効完成猶予事由」として規定されるようになりました。

5.借金問題は弁護士にご相談ください

借金を返済することなく長期間放置していて突然督促状が届いた場合には、消滅時効の援用により、借金の返済義務を免れる可能性があります。

また、消滅時効の期間は、権利の種類・性質等により様々であり、消滅時効については、時効の中断のように時効期間のカウントをリセットする制度など複雑なルールが存在していますから、焦って対応するのではなく、まずは弁護士に相談・依頼して、適切に対応できるようにしましょう。

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