自己破産の流れと弁護士依頼のメリット

自己破産

1.自己破産の申立について

1-1.支払不能とは

裁判所に破産手続の開始を認めてもらうためには、「支払不能」の状態にあることが必要です。

「支払不能」の状態とは、簡単にいうと、現在の財産状況や収入状況では、将来的にも、今ある借金を、期限どおりに支払っていくことができない状況を言います。

現在の収入から、毎月の借金の返済額を引くと生活できないような状態であれば、「支払不能」の状況にあると判断されます。

1-2.借金(債務)について

自己破産の申立を行なう際は、どこ(誰)に、いくらの借金があるのか、を一覧表にして提出しなければなりません。

また、一覧表にするだけではなく、その裏付け資料として借り入れた際の契約書や取引履歴なども一緒に提出する必要があります。

これらの資料が手元にない場合は、業者に対し、取引履歴の開示請求を行ない、取引履歴を取り寄せる必要があります。

また、借金をし始めてから、自己破産に至るまでの経緯(借金をした理由や使いみち、その頃の収入状況)について、陳述書にまとめて提出する必要があります。

1-3.財産について

自己破産をした場合は、生活に必要な最低限の財産以外の財産は、全て換価(お金に換えること)して、債権者に配当する必要があります。

この生活に必要な財産のことを「自由財産」といいます。現金であれば原則として99万円までは手元に残すことができますし、仕事や生活に必要な道具等も自由財産として手元に残すことが可能です。

自由財産に含まれない財産としては、不動産や自動車(但し、古い型など財産価値の乏しいものは除外されます)、20万円以上の生命保険解約返戻金等があります。

これらの財産は原則として換価(処分)の対象となりますが、電車やバスなどの通っていない地域に住んでいて自動車がないと生活ができない等の事情がある場合は、自動車の価値にもよりますが、自由財産の拡張という制度を利用して、処分しないで済む場合もあります(この辺りは少し複雑ですので、弁護士に確認することをおすすめします)。

2.管財事件か同時廃止か

自己破産の申立を行なうと、「破産管財人」が裁判所により選任されることが手続きとしては想定されています。破産管財人は、申立代理人以外の弁護士から選任されます。破産管財人が選任される場合を、「管財事件」といいます。

破産管財人は、財産の調査や換価・処分を行い、債権者に配当するという管財業務を行なうほか、免責不許可事由の有無等の調査を行ないます。

ただ、財産が全くなく、免責不許可事由がないことも明らかであるなど、破産管財人による調査の必要がないと認められる場合は、破産管財人が選任されないこともよくあります。この場合を「同時廃止」といいます。

管財事件の場合は、管財人報酬分を含めて最低22万円程度の予納金・郵券などを裁判所に納める必要がありますが、同時廃止の場合は、官報公告費などとして2万円程度の予納金・郵券などですみます(正確な金額・郵券の内訳などは、事前に裁判所に確認する必要があります)。

破産申立を弁護士に依頼せずに本人で行なっても同時廃止となる場合はありますが、申立を弁護士に依頼して、申立代理人の弁護士が事前にしっかりと調査を行なっている方が、同時廃止になる可能性は高いといえます。

個人破産の場合には、管財事件でも同時廃止でも、免責を許可するかどうかを審査する手続があり、「免責審尋」が行なわれます。

3.破産管財人による調査

3-1.破産管財人との面談

管財事件になり、破産管財人が選任された場合は、破産者は破産管財人と面談を行なうことになります。申立代理人の弁護士がついている場合は、通常、その弁護士と一緒に面談にのぞみます。

破産管財人との面談においては、裁判所に提出した破産申立書及び添付書類の内容について質問されたり、追加の資料の提出を求められたりすることがあります。

3-2.異時廃止

破産管財人による調査の結果、債権者に配当するような財産がないと判明した場合には、破産手続は配当に至らず終了します。これを「異時廃止」といいます。

個人破産においては、異時廃止の場合でも、免責を許可するかどうかを審査する手続があり、「免責審尋」が行なわれます。

3-3.財産の換価・処分・配当

自由財産を超える財産がある場合は、破産管財人がこれを処分し換価した上で、債権者にこれを平等に配当します。

自由財産を超える財産の中に、どうしても手元に残したい財産がある場合は、破産管財人と協議の上、親族等に時価で購入してもらうといった方法もありえます。

4.債権者集会

管財事件においては「債権者集会」があります。債権者集会は、裁判所で開かれ、破産管財人が債権者に対して、財産の有無、換価処分の状況や配当見込みなどについて説明を行います。

ただ、債権者は債権者集会に出席する義務があるわけではないため、実際には債権者がほとんど参加しないケースがよくあります。特に個人破産の場合には債権者が一人も出席しないまま集会が開かれることも少なくなく、東京地裁では3分程度で終わる場合も珍しくはありません。

5.免責審尋

「免責審尋」は、裁判所が破産者に免責に関する事情を尋ねるための期日です。

裁判所は免責審尋期日前に債権者に対して免責不許可事由の有無などについて意見照会をします。

同時廃止事件の免責審尋期日には、破産者、破産者代理人弁護士が出席します。債権者が出席しないことはよくあります。

管財事件の場合には破産管財人も出席して行われます。債権者集会の終了後に、引き続いて免責審尋期日が行なわれる場合もあります。

破産管財人は免責審尋期日前に破産者と面談するなどして、免責不許可事由の有無、これがある場合には裁量免責の相当性についても調査し、意見書を作成するなどの準備をします。

免責審尋期日においては、破産管財人は裁判所に意見書を提出して意見を述べます。

破産管財人の意見は、免責不許可事由は無い、もしくは、免責不許可事由はあるが裁判所の裁量で免責するのが相当である、または、免責不許可が相当である、のいずれかとなります。

また、債権者は免責不許可事由に該当する事実などについて意見を書面又は口頭で述べることができますが、実際にはそのような場面はほとんどありません。

6.免責許可・不許可の決定

免責審尋から1週間~10日程度で,裁判所が免責の許可または不許可の決定を行ないます。免責が許可され,その決定が確定すると,債務免除の効果が発生します。

免責が不許可となった場合は、高等裁判所に対して即時抗告という不服の申立をすることができます。この即時抗告は不許可決定書が届いてから1週間以内に申し立てる必要がありますので、この期間制限には注意が必要です。

7.配当

債権者に対する配当がある場合は、配当期日が設定されますが、破産者が配当手続に出席する必要はありません。

8.自己破産の申立を行うにあたって弁護士に依頼するメリット

自己破産の申立は弁護士に依頼せずに自分で行なうこともできます。ただ、以下の点で弁護士に依頼するメリットがあります。

①同時廃止にしてもらいやすくなる

裁判所に同時廃止を認めてもらうためには、自由財産を超える財産がないことや、免責不許可事由がないことを申立段階で裁判所にしっかり説明する必要があります。同時廃止を認めてもらえれば、管財事件に比べてはるかに予納金が少なくて済みますし、破産の手続自体も速やかに終了します。

②少額管財にしてもらいやすくなる

仮に自由財産を超える財産がある場合や免責不許可事由のあることが疑われる場合でも、申立時に弁護士が代理人としてついており、財産に関する調査や免責に関する調査がしっかりと行われている場合には、裁判所が少額管財事件として扱ってくれる場合があります。

少額管財事件の場合、予納金が20万円程度で済むというメリットがありますし、手続も比較的短期間で終了します。ただし、少額管財として扱ってもらえるかどうかは、裁判所によって異なるため、事前に弁護士としっかり相談することが大切です。

③自由財産拡張の申立が認められやすくなる

自由財産を超える財産のうち、どうしても手元に残したい財産がある場合は、自由財産の拡張を申立て、破産管財人と協議して、裁判所に認めてもらう必要があります。自由財産の拡張を認めてもらうためにも、その理由を破産管財人及び裁判所にしっかりと説明する必要があるため、弁護士に依頼した方がよいといえるでしょう。

④免責不許可事由がある場合に裁量免責が認められやすくなる

ギャンブルや浪費が借金の原因である等の免責不許可事由がある場合であっても、裁判所の裁量によって免責が認められる場合があります(裁量免責)。

したがいまして、免責不許可事由がある場合には、裁量免責を認めてもらえるように、破産管財人の調査に協力し、しっかり説明する必要があります。そのためにも、専門家である弁護士に申立書や陳述書の作成ではアドバイスしてもらうことが大切です。さらに、破産管財人の調査への協力・準備・対応等についてアドバイスを受けることができるという点も弁護士に依頼するメリットといえます。特に破産管財人の経験がある弁護士からは有益なアドバイスを期待できます。

⑤受任通知により債権者からの取立てをストップできる

自己破産の申立を弁護士に依頼すると、弁護士が債権者に対して「受任通知」を送付します。債権者に受任通知が届くと、債務者本人に対する取立てが禁じられることから、債権者による取立てや督促などが通常ストップします。

取立てや督促がストップすることのメリットは計り知れません。債権者への対応をすべて弁護士に任せることができますので、精神的にも大変楽になります。その後の破産の手続も安心してすすめて、再スタートを切る準備を行なうことができます。

⑥専門的知識・経験に裏付けられた有益なアドバイスを受けられる

弁護士は法律の専門家で専門的知識の裏付けがあるうえ、破産手続については、申立代理人や破産管財人として、何度も経験しているのが普通です。

ですから、面倒な書類の作成においても有益なアドバイスを受けられるし、手続きを安心して任せることもできます。申立に際して添付書類などに不備があると、財産隠しを疑われるなど様々な不利益がありますので、不備のない書類を作成してもらうことは重要です。

9.借金問題で悩んでいる方は、なるべく早く専門家にご相談を

借金問題をかかえていると、精神的にも負担が大きいので、仕事や普段の生活に悪い影響を与えてしまいます。

早期に弁護士等の専門家に相談することで、無駄な支払いを回避したうえ、できるだけはやく借金の負担から抜け出して新たな生活のスタート切ることができます。

債権者への展望のない支払いが結果的には新たな生活への再スタートを遅らせるだけで、家族や親族・友人らにも迷惑をかけるだけであったというケースは結構目につきます。

また、弁護士に相談することで、自己破産ではなく、任意整理や個人再生等の他の債務整理によって借金を整理できる方法を検討してもらうことも可能です。

インターネットで様々なことが調べられるようになり、自己破産や債務整理についての情報も得やすくなりましたが、インターネット上の情報の中には、必ずしも正確とはいえないものがあります。

また、破産に関する手続は、申立をする裁判所によって運用が異なることもあります。

確かに、弁護士に依頼すると費用が発生しますが、正確な知識を得るためにも、また迅速に手続をすすめるためにも弁護士に相談するメリットは大きいといえるでしょう。

10.自己破産等の債務整理はカヤヌマ国際法律事務所へ

カヤヌマ国際法律事務所は、自己破産申立をはじめとする債務整理事件も多数扱っている法律事務所であり、東京都新宿区にあります。最寄り駅の丸ノ内線四谷三丁目駅からは徒歩1分程度のすぐ近くにありますので、新宿区内の方はもちろん、近隣のエリア(千代田区、中央区、豊島区、中野区、杉並区など)の方はアクセスが大変良いです。

さらに、東京都全域、神奈川県、千葉県、埼玉県からもご相談をお受けしております。

自己破産などの債務整理を行う場合、最も気にかかることの一つは弁護士費用ではないでしょうか。カヤヌマ国際法律事務所は、事前に弁護士費用についても丁寧・詳細にご説明します。

また、受任が決まれば債権者に対して受任通知を送付することで借金の取立てや督促が止まりますので、その取り立てがストップしている間に、費用を分割でお支払いいただくことも可能です(詳細は弁護士費用のページをご参照ください)。

借金問題は早期解決がとても重要です。お悩みの方は、ご相談ください。

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