払い過ぎ利息が戻る過払い金返還請求?

過払い金返還請求

導入

過払い金、あるいは過払い金返還請求という言葉をご存じでしょうか?

以前はあまり知られていない言葉でしたが、最近ではかなりよく知られるようになりました。ラジオなどで過払い金に関する法律事務所や司法書士事務所のCMを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

過払い金とは、簡単に言うと、借金の返済をした際に払い過ぎた利息分のことをいいます。それを貸金業者に返還するよう求めることが過払い金返還請求ですが、この過払い金についての基本的な知識と、過払い金を取り戻すための方法について以下で説明します。

 

1.過払い金とは

過払い金とは、借金の返済をした際に払い過ぎた利息分のことです。

この過払い金を理解するには利息に関する法制度を理解する必要がありますので、これについてポイントを説明します。

借金の利息に関する法律として利息制限法があります。

この利息制限法1条は、お金の貸し借りに関する利息を元本額に応じて次のように制限しています。

元本額 上限利率
10万円未満 年2割(20%)
10万円以上100万円未満 年1割8分(18%)
100万円以上 年1割5分(15%)

この上限利率を超える利息は、その超えた部分について無効となります。

例えば、20万円のお金の貸し借りで利息を年30%と定めても、年18%を超える部分の利息は無効ですから、貸金業者は年18%までの利息しか受け取れないのです。

実は、この利息制限法の定める制限利率以上の利息を取ることはできないように思われますが、2010年(平成22年)までは、利息制限法とは別の、旧貸金業規制法という法律に「みなし弁済」という制度が存在し、貸金業者が利息制限法の上限利率を超える利息を取ることが一定の要件の下に許容されていました。

みなし弁済制度とは、貸金業者が貸し付けを行い、弁済を受けるたびに、法律の定める一定の条件を満たせば、利息制限法の上限利率を超える利息を受領することができるとするもので、いわば利息制限法の抜け道となる制度でした。

ただ、この「法律の定める条件」はかなり厳しい条件で、貸金業者の多くは実際にはこの条件を満たしていないのに利息制限法の利率を超える利息を徴収していました。

「法律の定める条件」を満たしていないのに利息制限法の利率を超える利息を受け取るとどうなるのでしょうか?

みなし弁済制度の適用はありませんから、原則に戻って利息制限法に定める利率を超える部分は無効となります。つまり、お金を借りた人が払った利息の一部が無効になるということです。この点は、一般の借り主の方には、まさか!!という思いと相まって、ある種の驚きとなるのではないでしょうか。

そこで、利息制限法に違反する「利息」を長期間にわたって借金の返済として支払っていた場合には、この払い過ぎた「利息」が支払いの都度残元金に充当されてどんどん元金が減っていくので、ある時点になると残元金自体が消滅してしまいます。

しかし、貸金業者が利息制限法に基づく再計算をすると残債がなくなりました、などと教えてくれるはずがありません!

貸金業者は、約定利息(これが利息制限法を越えているのです!)を前提にしてまだ元金が残っているという顔をして返済を受けるので、元金がなくなった時点以降における返済は払いすぎとなり、その払いすぎた分を貸金業者に返還を求めることができるのです。

この払い過ぎたお金が「過払い金」なのです。

なお、2010年(平成22年)にみなし弁済制度は廃止されました。したがって、現在では貸金業者が利息制限法の利率を超える利息を契約で定めることはまったくできないことになっています。抜け道がふさがれてしまったわけですね。

⇒「過払い金が発生するメカニズム(グレーゾーン金利について)

 

2.過払い金返還請求の流れ

前項で説明した過払い金ですが、お金を借りた人からすると、本来払わなくてよかったはずの利息を払ったことによって払い過ぎが生じているわけですから、当然貸金業者に対してこれを返すように請求することができることになります。これが「過払い金返還請求」です。

過払い金返還請求の法的性質は、不当利得返還請求(民法703条以下)ということになります。不当利得とは、法律上の原因がないのに他人の損失(返済)によって利益を得た場合をいいます。

貸金業者がみなし弁済制度の適用を受けられないのに利息制限法が制限する上限利率を超える利息を受け取っていたことは、まさにこの不当利得に当たることになるわけです。

この過払い金返還請求をどのようにして行うかについて、その流れを説明しておきましょう。

2−1.過払い金の算定(引き直し計算)

まず、過払い金の返還を請求する前提として、過払い金がいくらになっているのか、金額を計算する必要があります。

そのためには、貸金業者に過去の貸し借りの記録(取引履歴)をすべて開示するよう求めます。

貸金業者は取引履歴の開示を請求されると、これを開示してくることが現在では通常です。

そこで、開示された取引履歴をもとに、利息制限法の上限利率を超えて支払った利息部分についてはその支払いのつど元本の返済に充てたものとして計算をし直していきます。これが「引き直し計算」・「再計算」などといわれるものです。

この引き直し計算を最後の取引(返済または借入れ)分まで行い、計算結果(すなわち残高)がマイナスになっていればそのマイナス金額分の過払い金が発生しているということになります。

2−2.返還交渉

過払い金の計算ができたら、貸金業者に対してその過払い金の返還を求め、さらに過払い金が発生したときから過払い金が返還されるまでの遅延損害金(年5%)を支払うよう求めることになります。

この請求をすると、多くの貸金業者は過払い金の発生は認めつつ、返還する金額を減額するよう求めてきます。

この貸金業者の求めに応ずるかは、早急な解決を優先するか、満額あるいはそれに近い額での解決を優先するかによって判断することになるでしょう。

この判断は実際には結構難しい場合があります。とくに、貸金業者が中堅以下だと、過払い金の支払い資金が乏しく倒産してしまうリスクも検討する必要があるからです。

過払い金元金の60%~80%でも、とにかく急ぎで現金が欲しいという場合は、裁判まで起こさないで、早期に和解することがあります。

この訴外和解の場合でも、和解から支払い期限まで、できるだけ短くすることが肝要ですが、昨今の貸金業者の置かれた状況も様々であり、和解から2ヶ月程度で支払う業者もあれば、1年後というケースもあります。

⇒「過払い金の利息について

2−3.過払い金返還請求訴訟

貸金業者と過払い金返還請求の交渉をしたものの、金額に折り合いが付かず解決しない場合には、貸金業者を被告として裁判所に過払い金返還請求訴訟を提起し、裁判による解決を目指すことになります。

訴え提起から約1ヶ月~2ヶ月後あたりに第1回口頭弁論期日が開かれ、その後は月に1回ほどのペースで期日が開かれるのが通常の進行となります。

期日ごとに原告と被告の双方が交互に書面で主張と反論を繰り返します。

特に、過払い金返還請求訴訟においては、裁判所は当事者の主張などの状況を見て一度は必ず和解を勧めてきますが、和解が成立しない場合には最終的に判決となります。

訴え提起から判決までかかる期間はケースによりますので一概にはいえませんが、半年~1年程度の期間は見込んでおいた方がよいでしょう。

第1審判決に納得できない当事者は上級裁判所に控訴しますので、控訴されるとさらに決着をみるまで時間がかかります。控訴審の早い段階で和解となるケースも結構ありますが、そこで和解がまとまらないと、控訴提起から控訴審判決までおよそ4ヶ月~半年ほどかかることになります。

訴訟で過払い金返還請求を行うことのメリットとしては、遅延損害金を含めて満額の返還を受けられる可能性がある点です。交渉で解決する場合にはどうしても双方の譲歩が必要となりますが、判決で解決を図る場合には譲歩しないで済む場合もあります。

ただ、訴訟には、上記の通り、相当な期間と手間が掛かりますので、その点はデメリットいえるでしょう。

また、相手方業者が裁判途中で倒産するかもしれないというリスクもあります。

⇒「過払い金返還請求の流れ

2−4.過払い金と時効

注意すべきは、過払い金は消滅時効にかかって消滅してしまうことがある点です。

取引が終了したときから10年が経過すると、途中で時効の進行が中断しない限り、過払い金は時効消滅します。

ここで「取引が終了した」というのは、最後の貸し借りが行われた時点(完済した場合には完済時)のことですが、この点についても、裁判上の争点となることがよくあります(貸し付け停止措置の主張)。

そのため、過払い金返還請求を行うのであれば、この10年以内に行う必要があります。

なお、過払い金の発生から10年以上経過していても、取引の終了から10年が経過していない場合には時効には掛かりません。その場合にはまだ返還請求ができますので誤解されないようご注意下さい。

また、上記の通り、貸金業者からは返済の途中でも貸し付け停止措置を取ったのでそこから過払い金の消滅時効は進行するという主張が出されることがよくあります。

 

3.過払い金返還請求を弁護士に依頼するメリット

過払い金返還請求をする場合、本人が業者との交渉や訴訟提起をすることも不可能ではありません。

ただ、引き直し計算や貸金業者との交渉、裁判所における訴訟上の主張・立証活動などは、専門的な知識・経験が必要で大変負担の大きい作業ですから、専門家に依頼することを是非検討すべきです。

ご自身で訴訟を行うと、貸金業者側の主張にどこかで翻弄されてしまい、専門家であれば対応できるのに見過ごしてしまうリスクなどが一般的には大きいと言えるでしょう。

過払い金返還請求を依頼する専門家としては、弁護士と司法書士が考えられます。このうち、司法書士は一定の制限内でのみ過払い金返還請求を扱うことができることになっています。

具体的には、司法書士の代理権の範囲は140万円を超えない金額までとされていますので、過払い金が140万円を超える場合にはその返還請求について代理することはできないことになります。

過払い金の金額がいくらになるかは貸金業者から取引履歴の開示を受けて引き直し計算をするまでは正確には分かりませんので、司法書士に依頼したものの、開示を受けて引き直し計算をしてみたら過払い金額が140万円を超えたという場合には、そのまま司法書士に過払い金返還請求を依頼することはできないことになります。

他方、弁護士には司法書士のような代理権の範囲の限定はありませんので、過払い金額がいくらであろうと過払い金返還請求を行うことができます。

また、特に訴訟業務については一般的には弁護士の方が場数を踏んでいて経験が豊富で知識も確実であることが多いでしょう。

したがって、過払い金返還請求を依頼するのであれば、弁護士への依頼を選択する方にメリットがあるいうことができます。

なお、弁護士に依頼する場合でも、過払い金返還請求を扱い慣れている弁護士に依頼することが望ましいといえます。過払い金返還請求に関しては、複雑な論点が多数存在し、その解決には正確な判例などの知識や裁判所(簡裁だけでなく、地裁・高裁も必要です)の訴訟指揮・対応の仕方に関する知識・経験が必要なためです。

⇒「借金問題・債務整理は司法書士ではなく弁護士に依頼すべき理由

 

4.過払い金返還請求の手続はカヤヌマ国際法律事務所へ

もし過去に借金をしていたが完済したという人も、完済から10年が経っておらず、返済時に利息制限法の利率を超える利息を払っていたとすれば、過払い金返還請求ができる可能性が高いといえます。

心当たりのある方は、一度確認してみることをおすすめします。

過払い金の請求は、訴訟をすることで満額を取り戻すことができる可能性があります。カヤヌマ国際法律事務所では、過払い金返還請求訴訟についても対応可能です。

当事務所は、過払い金返還請求手続をはじめとする債務整理事件全般を多数扱っております。

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