会社と社長の破産について知っておいてもらいたい4つのポイント

会社の債務整理

経営している会社が業績や資金繰りの悪化により倒産するときには、多くの場合、その会社の社長(代表取締役・代表社員)もあわせて自己破産します。

中小企業では、会社の融資を受ける際には、社長が会社の債務について連帯保証していることが多いためです。

会社を経営していた方の多くは、再度の起業を考える方が多いようです。そこで、会社の経営者が自己破産すると、「事業を二度と興せなくなるのか」ということが気になります。

このコラムでは、会社を経営している方が、会社の倒産とあわせて自己破産する際に、知っておきたい重要なポイントについて説明していきます。

1.自己破産しても「会社の取締役」になれるのか?

結論から言えば、現在の法律では、自己破産後に会社の社長(代表取締役・代表社員)になることは、法律上何の問題もありません。ウェブでは、「自己破産すると取締役にはなれない」と説明しているサイトを未だに見かけることがありますが、正しい情報ではありません。

会社に関する法律は、他の法律に比べて頻繁に変更されます。常に最新の情報を確認することが重要です。

1−1.会社役員の欠格事由について

会社役員(取締役・社員)の欠格事由に関する規定を確認しておきましょう。

①取締役に関する旧商法の規定

以前の法律では、「破産手続開始ノ決定ヲ受ケ復権セサル者」は取締役にはなれませんでした(旧商法254条の2第2項)。しかし、この旧商法の規定でも、免責確定等によって復権すれば、「過去に自己破産した人」でも取締役に就任することはできました。

②取締役に関する現行会社法の規定

現在の会社に関する規定は、「会社法」に規定がおかれています。上記の旧商法254条に該当する条文は、「会社法では削除」されています。

したがって、現行会社法の規定では、「破産して免責を受ける前」であっても株式会社の取締役に就任できます。

なお、現行法での「取締役の欠格事由」は次の通りです(会社法331条第1項)

1号:法人
2号:成年被後見人・被補佐人
3号:会社法違反・金融商品取引法違反(不正取引・インサイダー取引等)・各種倒産法違反(詐欺破産等)等の罪を犯し、その刑の執行後、または執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
4号:前第3号以外の法令違反により、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでまたはその執行を受けることがなくなるまでの者(執行猶予中の者は除かれます)

③持分会社の社員に関する規定

持分会社には、合名会社・合資会社・合同会社があります(会社法第575条)。持分会社のうち、社員=出資者が1人だけの「1人会社」のようなケースでは、「合同会社」を設立する方が増えています。

合同会社は、会社法で新しく設けられた会社の形態です。合同会社の有名企業としては、アップル・ジャパンやアマゾン・ジャパン、西友などが挙げられます。

合同会社等の持分会社の役員は、法律上「社員」とよびます。社員は出資者ですが、株主会社の株主と異なり(株式会社の場合には原則的に所有者=株主と経営者=取締役は分離する所有と経営の分離が原則的形態として制度設計されています)、社員が役員となるのが原則的な形態(所有と経営の一致)です。

持分会社の社員の欠格事由は株式会社の場合とはだいぶ異なります。

たとえば、「法人」は、株式会社の取締役にはなれませんが、持分会社の社員になることはできます。

また、免責前の破産者であっても株式会社の取締役には一旦辞任する必要はありますが、再度就任することは可能です。

1−2.会社存続のケースでは注意が必要

多くの場合には、会社と社長は同時に破産します。

しかし、「不採算部門を整理すれば収益が見込まれるケース」等では、民事再生を申し立てることで、会社を破産させずに済むこともあります。

このようなときに、社長が会社の債務に連帯保証をしていれば、「会社は破産しなくても社長は破産する」という場合もあり得ます。会社の民事再生では、「社長個人の連帯保証は減免されない」からです。

「会社は存続するけれど、社長は破産する」というケースでは、多少注意が必要です。

①社長が自己破産すると「1度退任する」必要がある

取締役(株式会社)・社員(持分会社)いずれの場合であっても、在任中の社長が自己破産すれば、1度退任する必要があります。

取締役は、破産によって「会社との委任契約が終了(民法653条3項)」し、社員は、破産が「法定退社事由(会社法607条1項5号)」となっているためです。

②持分会社なら「定款」によって退社しなくて済むようにもできる

持分会社であれば、予め「社員が自己破産しても退社しない」旨を定款に定めておくことが可能です(会社法607条2項)。

③非公開会社であれば、再任手続きを簡素化できる

取締役の再任には、株主総会の決議が必要です。「株主総会を開く」というと大きな手間がかかるイメージがありますが、非公開会社であれば、簡易な招集手続きで株主総会を開催する旨を予め定款に定めることも可能です。

たとえば、「家族だけが株主」というような「取締役会非設置会社」であれば、予め定款に定めておくことで、株主である家族に「明日株主総会を開催する」と口頭で伝えることで株主総会を招集できます。

先に説明したように、現行会社法では、「免責確定を待たずに取締役に再任される」ことも可能です。

ただ、実際には、会社存続のために債権者の理解を得ておく必要があるでしょう。

2.「破産」は「再出発」のための救済手段

「破産」というと、どうしてもネガティブなイメージを抱きがちです。また、「破産」にまつわる様々な噂や間違った情報も数多く存在します。「破産すると取締役になれない」というのは、まさにその典型です。

旧商法下でも「自己破産しても復権すれば」取締役に就任することは問題ありませんでした。現行の会社法では、これをさらに緩めて「免責を待つ」必要すらなくなったことは、上で説明したとおりです。

このような改正は、中小企業の経営者が自己破産したケースを念頭に、「早期の経済的再生」を図れるようにとの狙いによるものです。

3.破産に必要な費用に関する問題

破産するためは、申立手数料(印紙代)のほか、予納金(破産管財人の報酬)等が必要です。また、破産手続きを依頼する弁護士に支払う着手金等の弁護士費用も必要となります。

実際の会社破産では、破産申立に必要な費用をどのように工面するかで悩むことが少なくありません。

たとえば、会社に「申立費用を捻出できるだけの資産がない」場合には、会社代表者の個人資産から破産申立費用を捻出することは可能なのでしょうか。また、それとは逆に、会社代表者が自己破産の費用を会社の資産から支出することは可能なのでしょうか。

3−1.会社破産と社長の自己破産は同時に行う

会社の債務を社長が連帯保証しているとき等には、会社破産と同時に社長も自己破産します。会社と社長は、法律上別人格ですから、理屈の上では、「同時破産」が強制されているわけではありません。

しかし、中小企業や1人会社の場合には、次のような理由から、会社と社長(代表取締役・代表社員)は、同時に破産処理をするのが一般的です。

  • 社長が会社の債務を連帯保証しているケースでは、同時破産でないと問題が解決しない
  • 社長の自己破産により会社の代表者がいなくなる
  • 会社を破産させなければ、債権者が損益処理できない
  • 1人会社・零細企業の場合には、社長と会社の財産が明確に区別されていない場合がある

3−2.法人でも少額管財を利用できる場合がある

東京地裁では、会社破産の場合でもいわゆる「少額管財」(※東京地裁では「通常管財」とよんでいます)を利用できる場合があります。

東京地裁では、次のようなケースでは、会社破産でも少額管財の利用が可能です。

  • 会社が小規模で社長個人と同視でき、社長と同時に破産の申立があったとき
  • 廃業から長期間経過している等の理由で会社に財産がほとんどない場合
  • 若干の会社財産があり多少の換価作業が必要であるが、会社に予納金を納める資力がない場合

会社の破産手続は「管財事件」となるのが原則です。

管財事件(特定管財)の場合、70万円以上の予納金が必要となります(負債額に応じて高くなります)。なお、これに社長の破産手続きの予納金(特定管財で50万円~)をあわせると予納金だけで最低120万円必要となります。

しかし、少額管財を利用できれば、予納金は会社の分と代表者個人の分を合わせて「20万円~」となり少額に抑えられる場合が結構あります。少額管財は、破産手続を、法の許容範囲内であることは当然の前提ですが、できるだけ簡易迅速に処理し、管財人報酬を安くすることを目的に始められた運用です。

なお、少額管財を利用するためには、弁護士が代理人となって破産を申し立てなければなりません。弁護士が代理人となることで申立人(会社と個人の両方)の財産状況等を申立前にきちんと調査していることを期待できるのが通常だからです。

3−3.社長の自己破産にかかる費用を会社が支払うことは可能か?

「会社を何とか存続させたい」という思いで、自分の財産をすべて会社に投げ打ってしまったという社長さんは少なくありません。そのため、会社には破産の申立費用を捻出できるだけの財産が残っているが、「社長は全く財産がない」ということがあります。

そのような場合に、「社長の破産費用を会社で支払う」ことは、法律上難しい問題があります。たとえば下級審には、社長の弁護士費用を会社が支払ったケースで、破産管財人から受任弁護士への不当利得返還請求を認めたものがあります(大阪地判平成22年8月27日判例時報2110号103頁)。

その他方で、「会社と社長の債権者が共通している」場合には、会社が社長の破産手続費用を支払ったとしても「債権者を害する行為とは言えない」のではないかという意見もありますが、法律知識のない方が独自に判断することは避けた方が良いでしょう。実際には弁護士でも極めて難しい判断が必要となります。結局費用が捻出できなくて受任できない場合が多くなるのではないでしょうか。

3−4.会社の破産費用が捻出できない場合も注意が必要

「社長の個人資産」から会社の破産費用を支払えば、上と同じような問題が生じます。

会社に「破産費用を捻出できる現金がない」ときには、「売掛金の回収」や「事業譲渡」、「資産売却」によって破産費用を工面することが一般的なようです。

しかし、特に「事業譲渡」、「資産売却」する際には、後に裁判所および破産管財人から「売却価格」を問題視される可能性があるので慎重に行う必要があります。

ここでも受任弁護士の報酬金の額が問題とされることがありますので、弁護士としても慎重な判断が求められることになります。

4.できるだけ早く弁護士に相談することが大切

法人破産では、破産費用を用意する前に、弁護士に相談・依頼されることも珍しいことではありません。売掛金の回収でも時期や金額によっては手続きが開始された後で裁判所や破産管財人から問題視されることがあり、ましてや事業譲渡、資産売却が必要なケースでは、費用の捻出がさらに難しい場合となります。

会社は破産すれば法人格が消滅しますが、個人は破産しても法人格は消滅しません。そのため、個人では免責手続きが必要となります。

個人の破産は「再チャレンジ」のための手段です。現行会社法で、取締役の欠格事由が削除されたことも、「破産による再チャレンジ」をしやすくするためともいえます。

5.会社破産のご相談はカヤヌマ国際法律事務所へ

債務超過、支払不能に陥った際は、できるだけ早く弁護士にご相談ください。

会社の破産では、個人の破産よりも複雑な問題が多く生じます。

受任通知送付や破産申立ての時期等も慎重に相談しながら対応を決めていかねばならないことが少なくありません。

カヤヌマ国際法律事務所は、会社破産問題だけでなく、多くの任意整理・個人再生・自己破産などの債務整理事件を解決してきました。

アクセスは最寄り駅の丸ノ内線四谷三丁目駅からは徒歩3分程度と良好で、新宿区内以外でも、近隣エリア(港区、千代田区、中央区、豊島区、中野区、杉並区、世田谷区、渋谷区、練馬区、台東区、大田区など)や、東京都全域、神奈川県、千葉県、埼玉県からご相談をお受けしております。

早期にご相談いただくことで、民事再生等により会社破産が回避できるケースもあるかもしれません。会社の経営が行き詰まったときには、状況がより深刻になる前に、弁護士にご相談ください。

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