給与が差し押さえに…個人再生・自己破産なら本当に止められるか?

滞納・督促

1.借金滞納が原因で給与が差し押さえられる場合とは

1−1.差し押さえとは

借金を契約通りに返済できないで滞納を続けてしまうと、財産を差し押さえられる可能性があります。

差し押さえとは、債務者の財産から強制的に債権を回収するために債務者が保有する財産の処分を制限し確保するための法的手続をいいます。差し押さえは強制執行手続の出発点となるものです。

差し押さえの対象となる財産には様々なものがあります。例えば、

  • 土地・建物(不動産)
  • 銀行預金
  • 給与

等です。

これらの財産が差し押さえられると、債務者はその財産を自由に処分することができなくなり、差し押さえられた財産は競売や取り立てなどにより金銭化され、債権の支払いに当てられます。

このような差し押えで、手っ取り早く行われるのが給与差押えです。

1−2.給与を差し押さえられるとどうなるか

給与は、従業員(労働者)の雇用主に対する賃金の支払いを求めることができる権利(=債権)です。

これを債権者が差し押さえると、雇用主は従業員に給与(賃金)を支払うことが禁じられますので、債務者である従業員は、雇用主に対して賃金の支払いを求めることができなくなります。

雇用主は差押債権者に対して、従業員に対する賃金で差押えの対象となった分を直接支払わなければなりません。

もし、雇用主が従業員に給与を払わないのはかわいそうなどと思って、従業員に差押えられた分の給与を支払ってしまうと、雇用主は差押債権者には従業員へ支払済みであることを主張できないので、差押債権者に対しても差押え分の給与を支払わなければならなくなります。その結果、雇用主は給与を二重に支払うことを強制されてしまいます。

ただ、差押えを受けた従業員が給与をまったく支払ってもらえなくなると生活ができませんから、法律は差し押さえることができる給与の範囲を制限しています。

差押えの対象となる給与は、原則として、税金や社会保険料等を控除した手取り額の4分の1までに限られています。但し、手取り額が44万円を超えるときは、手取り額から33万円を引いた残額までとなり、この4分の1を超えることになります。⇒「給与差押え禁止の範囲

差し押さえの対象が一定額に限定されているとはいえ、突然給与が4分の1も受け取れなくなるのですから、その影響は大きいといえますし、何より、会社に借金の存在がばれてしまうというデメリットもあります。

1−3.給与を差し押さえられるのはどんな時か?

借金の滞納をしただけでは、通常は、いきなり給与を差し押さえられることはありません。

しかし、借金の滞納が続き、債権者から、支払督促や貸金返還請求訴訟といった法的手続がとられ、仮執行宣言付き支払督促や判決などで支払いが命じられた場合は、以後、債権者は債務者の財産を差し押さえることが可能になりますので、いつでも給与の差し押さえをできる法的な権限を手に入れたことになります。

2.個人再生による給与差し押さえの解除方法

借金の滞納が原因で給与を差し押さえられてしまった場合は、裁判所の手続きとなる個人再生を行うことで、差押えをストップし解除することができます。

2−1.個人再生の申立による差し押さえの中止

個人再生の申立を行った場合、開始決定が出る前でも、債務者は、強制執行の中止命令の申立をすることができます。これを裁判所が認めると差し押えは中止されます。

また、個人再生の申立を行い、裁判所が再生手続の開始決定を下した場合、この手続開始決定には差し押さえを中止する効果があります。

なお、ここで注意が必要なことは、差押えが中止になっても差し押さえを行った裁判所(執行裁判所)は、個人再生手続きを担当する裁判所とは別であり差押の中止を当然には知り得ませんから、差し押さえの中止命令書もしくは再生手続開始決定書を執行裁判所に提出する必要がある、ことです。

また、差し押さえが中止されても、直ちに給与を受け取ることができるわけではありません。中止は、あくまで強制執行手続の進行をいったん停止させるだけなので、雇用主が差押債権者に対して差し押さえられた給与を直接支払うことはできなくなりますが、従業員に対しても支払うことができないままで、結局、雇用主の元でプールされることになります。

再生計画の認可決定が確定する前に給与を受け取るためには、個人再生を申し立てた裁判所に、差し押さえの中止ではなく、取消を求める必要があります。個人再生を申し立てた裁判所が、「再生のために必要がある」と判断した場合は、差し押さえが取り消されることになり、その旨を執行裁判所に伝えることで、給与を受け取ることができるようになります。

2−2.再生計画認可による給与差し押さえの解除

個人再生の申立を行い、裁判所が再生手続開始決定を出した後、再生計画案が認可されて確定すると、それまでに行われた差し押さえ(再生手続開始決定によって中止されているもの)は全て効力を失います。

この場合、差し押さえは効力を失いますから、以後、給与の全額を受け取ることが可能になります(これまでに中止によってプールされていた分も受け取ることが可能です)。

2−3.個人再生には「差し押さえをさせない」効果もある。

上記のように、個人再生の手続を進めることで、個人再生の申立前に始められた給与差押手続を中止させたり、失効させたりすることができます。

さらに、個人再生手続開始決定が出た後は、債権者が新たに差し押さえの申立をすることもできなくなります。

そのため、個人再生の準備をしていると告げた段階で、給与の差し押さえをあきらめる債権者もいます。費用と時間をかけて差し押さえをしても、個人再生の申立が進めば、結局差し押さえの効力がなくなってしまうからです。

ですから、給与を差し押さえられる前であっても、その可能性があるときは、いち早く個人再生申立の準備に入ることが、給与の差し押さえを事前に防止することにもつながるのです。

但し、貸金業者の中には、強硬な債権者(関西方面の貸金業者など)もいて、個人再生(破産の場合も)の申立には時間がかかることがあるので、その間に裁判を起こして、抜け駆け的な債権回収を目的にして給与差押えを狙ってくることがありますので、裁判を起こされた場合には、早急に弁護士に相談・依頼する必要があります。

3.自己破産による給与差し押さえの解除方法

自己破産は、申し立て時の財産の有無等の違いによって同時廃止と管財事件に分かれます。いずれの場合も、最終的には差し押さえを止めることができます。

3−1.給与を差し押さえられそうな場合ー貸金返還請求の裁判が提起され、判決前の状態

貸金業者から裁判を起こされると、早ければ2~3ヶ月ほどで仮執行宣言付き判決を取得され、給与を差押えられてしまうおそれが現実化してきます。

給与を差押えられただけで、それを理由として解雇されることはありませんが、事実上は勤務先の会社などにも迷惑をかけたり、社内で様々の噂が流れるなど居づらくなることがありますので、裁判を提起された場合には迅速な対応が必要になります。

すでに支払い不能な状態で、給与を差し押さえられると直ちに生活ができなくなるという場合などは、とりわけ専門家にすぐ相談するなどして、素早い対応をすることが大切です。

裁判を起こされた場合の具体的な対応としては、答弁書の提出など裁判手続への対応や破産申立準備など、短期間にしなければならないことが多いので、まずは裁判の専門家である弁護士に相談しましょう。当事務所もそうですが、今日、電話やメールでも無料相談を実施している法律事務所はたくさんあります。

裁判を起こされた場合には、とにかく対処の時間が限られてくるので、一刻も早く専門家に相談しましょう。

3−2.自己破産(同時廃止)と給与差し押さえの関係

まず破産手続として同時廃止を選択した場合に、給与の差し押さえがどのようになるのか、説明します。

3−2−1.給与差押えは法律上ストップとなる

同時廃止の場合、破産手続自体は開始と同時に廃止により終了しますが、さらに免責許可の申立を同時にしていますので、すでになされている給与差し押さえは中止となりますし、新たな差し押さえは法律上できなくなります。

但し、差押えは免責決定が確定するまでは、中止の状態のままですので、その間は差し押さえられた給与を受け取ることはできません。勤務先の手元に留保されたままとなります。

給与の差し押さえは、免責許可決定が確定すれば効力を失いますから、免責の確定を待って差押えで保留された給与を全額受け取ることが可能になります。

なお、個人再生の場合と同様、破産の決定を行う裁判所と差し押さえを行った執行裁判所が異なることから、差し押さえの中止や失効の効力を現実化させるためには、破産手続開始決定がなされたことや免責決定が確定したことを、差し押さえ命令を出した執行裁判所に連絡する必要があります。

3−2−2.同時廃止では給与差押えがなされる事実上のリスクがあること

なお、注意しなければならないことは、同時廃止の場合には、貸金業者が提起した訴訟手続自体をストップすることができないことです。そのため、免責許可の申立てをしていても貸金回収のための裁判はどんどん進んでしまうことがあります。

そうしますと、免責許可決定の前に、仮執行宣言付きの判決が出て、給与差押手続が事実上途中まで進行する事態が生じ得ます。

給与の差押えを担当できる執行裁判所は債務者の住所を管轄する裁判所なので、どこの裁判所が給与差押命令を発令できる執行裁判所となるのかは、事前にわかります。

しかし、注意が必要なことがあります。実際には、執行裁判所は事前に債務者が免責申立済みであることを理由に給与差押命令の発令中止などをお願い(上申書を提出)してもこれを受け付けないという取り扱いが通常のようです。

そうしますと、同時廃止で免責許可の申立をしていても、事実上、仮執行宣言付き判決による給与の差押え手続を事前に完全にストップすることはできないことになります。

もちろん、給与差押命令が勤務先に届けば、差押えがなされたことを勤務先からの連絡で把握できますので、直ちに執行裁判所に執行手続の中止を求めることができますが、勤務先には知られてしまい、「後の祭り」ということになりかねません。

そのため、強硬な債権者が訴訟を進めている場合には、同時廃止ではなく、管財事件を選択する必要に迫られる場合があります。そこで、20万円の予納金を準備する必要に迫られます。

なお、このような場合を避けるには、事務手続き上難しい点があるのかもしれませんが、破産法249条1項の定めにより同時廃止決定が出て免責許可の申立済みである場合には、新たな給与差押えはできないことが法律上明白なのですから、執行裁判所に対してその旨の上申書が提出されれば、法の趣旨・精神を徹底するためにも、執行裁判所は給与差押命令を発令しないとする実務の運用改善が必要ではないでしょうか。

3−3.自己破産(管財事件)と給与差し押さえの関係

自己破産の申立をして管財事件となる場合(破産管財人が選任される場合)は、破産手続開始決定がなされるのと同時に差し押さえは効力を失います。

この場合も、破産開始決定を行った裁判所と給与差押命令を発令した執行裁判所が異なるため、この執行裁判所に、破産開始決定がなされた旨を伝える必要がありますが、実務上は破産管財人がこれを行うのが通常です。

また、強硬な債権者が訴訟を進めている場合には、破産手続開始決定書を貸金訴訟が進行している裁判所に送付することで、裁判が「中断」しますので、判決が出されることがなくなり、給与を差し押さえられる心配もなくなります。

なお、これによって差し押さえが効力を失っても、破産管財人が処分権を持っているため、法律上当然に差し押さえられていた給与を受け取ることができるわけではないのですが、実務上は、破産管財人の判断によって、差し押さえられていた給与を受け取ることができるようになるのが一般的です。

上記の点は、破産手続開始決定前に既に発生していた給与債権に関することであり、破産手続開始決定後に発生した給与については、管財事件であれば直ちに全額受領することができます。

3-4.自己破産申立の効果(まとめ)

このように、自己破産手続きが開始されると新たな差し押さえはできませんし、すでに開始された給与差押えも失効したり、中止になったりします。中止の場合でも免責許可決定が確定すると、最終的には差し押さえの効力は失われます。

ですから、まだ給与を差し押さえられていなくても、その後の差し押さえを防止するという観点からは、早い段階で自己破産を検討するメリットは極めて大きいといえるでしょう。

4.任意整理では差し押さえを止めることはできない

給与の差し押さえがなされてしまうと、給与の4分の1が強制的に受け取れなくなるなど、生活への影響は極めて大きいといえます。

ですから、一刻も早く差し押さえを解除してもらう必要があります。

また、金銭的な問題だけではなく、会社に借金を滞納している事実がばれてしまう等のデメリットもあります。

いったん給与の差し押さえがなされると、滞納額全額を一括返済でもしない限り、債権者が差し押さえを解除してくれることはめったにありません。

ですから、給与の差し押さえがなされた場合はもちろん、そのような可能性がある場合(裁判を起こされて判決が出た場合等)には、早めに対処することが必要です。

ここで、気を付けなければならないのは、任意整理では差し押さえをとめることはできないということです。

上記のとおり、個人再生又は自己破産という法的整理を選択することによって、差し押さえを強制的に止めることができるのです

5.給与の差し押さえが心配な場合は、カヤヌマ国際法律事務所へご相談を

給与の差し押さえがなされるまでには、借金を何とかしようと一人で努力されたり、悩まれたりされた方も多いと思います。

そのような苦境においても、あきらめなければ、法的な借金整理の制度を利用し、借金の総額を減らしたり、ゼロにしたりすることによって、生活を立て直し、再スタートを切ることは十分可能です。

給与が差し押さえられてしまうと、十分な収入を得る途が一旦無くなってしまうことになりかねませんから、できるだけ早い段階で、法律の専門家である弁護士に相談されることをおすすめします。

カヤヌマ国際法律事務所は、給与差押えの解除手続に直結する個人再生事件・自己破産事件をはじめとする債務整理全般を多数扱っている法律事務所です。

カヤヌマ国際事務所は東京都新宿区にあり、最寄り駅は丸ノ内線四谷三丁目駅で新宿駅から5分ほどの近場であり、さらに四谷三丁目駅から徒歩3分程度の便利な場所にあります。

このように、カヤヌマ国際事務所は新宿区内の方はもちろん、近隣のエリア(千代田区、中央区、豊島区、中野区、杉並区、港区など)の方にとってもアクセスが大変良いですし、東京都全域、神奈川県、千葉県、埼玉県などの近隣地域からもご相談を受けております。

借金問題は早期解決がとても重要です。受任が決まれば債権者に対して受任通知を送付することで一般に取立がストップするので、督促のストレスからも解放されます。

お悩みの方は、ぜひお早めにご相談ください。

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