給与差押え!個人再生・自己破産で解除

滞納・督促

給与差押え!個人再生・自己破産で解除

借金の返済を長期に渡り滞納していると、給料を差し押さえられてしまう可能性が高いです。
いったん差し押さえられると、滞納している全額を一括返済でもしない限り、完済されるまで差し押さえは続くでしょう。そうすると、借金を滞納していることを会社に知られてしまうだけでなく、今後の家計のやりくりも難しくなってしまいます。

ですから債権者が
a)「支払督促」や「貸金返還請求訴訟」等の法的手続をとってきた場合

差押えに発展する可能性が高いので、至急、差押えを「回避」する手段をとりましょう。

残念ながらすでに債権者が
b)差押えをしてしまった場合

直ちに差押えを「中止」する手段をとりましょう。

そして、a)b)いずれの場合でも有効な手段は、
「個人再生」または「自己破産」手続きをとること
のいずれかになります。

この記事では、b)差押えをされてしまった場合に、差押えを「中止」させる手段を先に解説し、その後に、a)差押えをされそうな場合に、差押えを「回避」する手段について解説します。

差し押さえ通知や裁判所からの訴状が届いたという方は、この記事をお読みの上、すぐにでも弁護士へご相談ください。

【この記事を読んでわかること】

  • 給料を差し押さえられると、完済まで受け取れる手取り額が減る
  • 給与差し押さえは個人再生や自己破産で解除できる
  • 給与差し押さえは事前に回避することも可能

1.差し押さえとは?

「差し押さえ」とは、債務の滞納を続けている債務者の財産から強制的に債権を回収するための法的手続です。
消費者金融や銀行からの一般的な借入に限らず、税金・家賃・養育費等の滞納により差し押さえをされることもあります。

差し押さえの対象となる財産には、給料の他にも預貯金、不動産(土地・建物)、高価な車などがあります。

しかし、預貯金はそもそも口座に十分なお金が入っていない可能性がありますし、不動産は競売により金銭化する手間があります。
そのため、差し押さえの中でも最も手っ取り早く行われるのが「給料の差し押さえ」となります。

給与は、従業員(労働者)が持つ、雇用主に対する「賃金の支払いを求めることができる権利(=債権)」です。

これを債権者が差し押さえると、雇用主は従業員に給与(賃金)を支払うことが禁じられます。すなわち、債務者である従業員は、雇用主に対して賃金の支払いを求めることができなくなります。

雇用主は、従業員に対する賃金で差し押さえの対象となった分を、差押債権者に直接支払わなければなりません。

しかし、差し押さえを受けた従業員が給与を全く支払ってもらえなくなると生活ができません。そこで、法律は差し押さえることができる給与の範囲を制限しています。

差し押さえの対象となる給与は、原則として、税金や社会保険料等を控除した手取り額の4分の1までに限られています。ただし、手取り額が44万円を超えるときは、33万円を超える額が全額差し押さえとなります。

一定額に限定されているとはいえ、突然給与が4分の1も受け取れなくなるのですから、その影響は大きいといえます。

何より、給料を差し押さえられると勤務先に借金の存在と滞納がばれてしまいます。

ですから、差し押さえられてしまった場合はもちろん、差し押さえられそうな場合も、早く差押えから逃れる手段を講じるべきです。

 

2.個人再生による給与差し押さえの解除

借金の滞納が原因で給料を差し押さえられてしまった場合は、裁判所の手続きとなる「個人再生」を行うことで差し押さえを解除することができます。

2−1.個人再生申立で差し押さえは中止される

(中止命令による中止)

裁判所に対して個人再生の申立を行った場合、手続きの開始決定が出る前でも、債務者は差し押さえ(強制執行)の中止命令の申立をすることができ、裁判所がこれを認めると、「中止命令」が出されます。

民事再生法 第26条
裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、再生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続の中止を命ずることができる。

「中止命令」が出されたら、その命令書を執行裁判所に提出することで、差押えは中止されます。

(開始決定による中止)

また、個人再生の申立を行い、裁判所が再生手続の開始決定を下した段階になると、民事再生法第39条により差し押さえが中止されます(中止命令の申立ては不要です)。実際の手続きとしては、再生手続開始決定書を執行裁判所に提出することで、差押えは中止されます。

民事再生法 第39条
再生手続開始の決定があったときは、(中略)再生債務者の財産に対する再生債権に基づく強制執行等(中略)の申立てはすることができず、破産手続、再生債務者の財産に対して既にされている再生債権に基づく強制執行等の手続(中略)は中止し、(後略)

なお、差し押さえが中止されても、直ちに給料を満額受け取ることができるわけではありません。次項で説明する「解除」の時まで、差し押さえ分の給料は雇用主の元でプールされることになります。

2−2.再生計画認可により差し押さえが解除される

その後、再生計画案が認可されて確定すると差押えの手続きは、民事再生法第184条によりその効力を失いますので、これまで中止によってプールされていた分をまとめて受け取ることが可能となり、以後の給与も全額受け取ることが可能となります。

民事再生法 第184条
再生計画認可の決定が確定したときは、第39条第1項の規定により中止した手続又は処分は、その効力を失う。(後略)

 

3.任意整理では差し押さえを止めることはできない

尚、分割返済の債務整理手段として任意整理がありますが、注意すべきは、この任意整理では差押えを止めることはできない、ということです。

なぜならば、任意整理はその名のごとく、弁護士と債権者の間で法律を根拠とすることなく「任意」で行う手続きのため、これまで説明した個人再生における「民事再生法第26条、39条、184条」のような差押えを中止させる法律がないからです。

 

4.自己破産による給与差し押さえの解除

自己破産には、同時廃止と管財事件の二つの手続き方法がありますが、いずれの場合も最終的には差し押さえを止めることができます。

4−1.同時廃止の場合

破産者に目ぼしい資産がなく、免責不許可事由もない場合、簡易的な同時廃止で自己破産手続きが進められます。自己破産といえば、ほとんどの場合このタイプになります。

同時廃止の場合、破産手続開始と同時に手続きは廃止されますが、免責許可の申立てがあったと見なされますので、破産法第249条第1項が適用されて、強制執行(差押)は中止となり、また、新たな差し押さえは法律上できなくなります。

破産法 第249条
免責許可の申立てがあり、かつ、(中略)破産手続廃止の決定(中略)があったときは、当該申立てについての裁判が確定するまでの間は、破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行、(中略)はすることができず、(中略)破産債権に基づく強制執行等の手続又は処分で破産者の財産に対して既にされているもの(中略)は中止する。

ただし、注意すべきは、免責(借金を0にすること)決定が確定するまでは、中止の状態のままです。個人再生のケースと同じく、その間は差し押さえられた給与を受け取ることはできません(勤務先にプールされたままとなります)。

給与差し押さえは、免責許可決定が確定すれば効力を失いますので、免責の確定を得た段階で差し押さえで保留された給与を全額受け取ることが可能になるのです。

破産法 第249条第2項
免責許可の決定が確定したときは、前項の規定により中止した破産債権に基づく強制執行等の手続(中略)は、その効力を失う

4−2.管財事件の場合

破産者に処分すべき資産がある、免責不許可事由があるなどで破産管財人が選任されるケースでは、手続きは管財事件となります。

管財事件では、破産法第42条により、破産手続開始決定がなされるのと同時に差し押さえは効力を失いますので、破産手続開始「決定前」に差し押さえられた分については、この条文により受け取ることができます。

破産法 第42条
破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行(中略)で、破産債権若しくは財団債権に基づくもの又は破産債権若しくは財団債権を被担保債権とするものは、することができない。
2 前項に規定する場合には、同項に規定する強制執行(中略)で、破産財団に属する財産に対して既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う(後略)。

一方、破産手続開始「決定後」の差し押さえについては、破産法第100条により差押えができないことになっておりますので、破産者は給与を満額受け取ることができます。

破産法 第100条
破産債権は、この法律に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ、行使することができない。

 

5.給与差し押さえの「回避」

既に給与を差し押さえされている場合は、上記のような個人再生または自己破産による「解除」を目指すことになります。

では、差し押さえをされそうだが、まだされていない場合はどうでしょうか。差押えを未然に防ぐことができれば、いいですね。実はこのような状況でも、同様に、個人再生・自己破産という武器を持つことで、給料の差し押さえをされること自体を「回避」することができるのです。

その仕組みは、こうです。

つまり既に説明したとおり、個人再生や自己破産の開始決定が出た後は、債権者が新たに差し押さえの申立をすることが法的にできなくなります。
そのため、

1)弁護士から債権者への受任通知により、個人再生・自己破産の準備をしていると分かった段階で、多くの債権者は、給料の差し押さえを諦めます。というのは、今後費用と時間をかけて差し押さえをしても、個人再生・自己破産の申立が進めば、結局差し押さえの効力が法的になくなってしまい、無駄な努力になってしまうからです。

2)それでも諦めない債権者もいるでしょう。この場合は、個人再生手続き開始決定を得るのと債権者が差押え決定を得るのとどちらが早いかの時間との勝負になります。

通常、貸金業者から裁判を起こされると、早ければ2~3ヶ月ほどで給料を差し押さえられてしまうおそれが現実化してきます。

ですから、債権者が差押えの準備に取り掛かっている兆候が見られたら、とにもかくにも個人再生、自己破産の申し立てを急がなければなりません。

給与差し押さえを理由として解雇されることはありませんが、事実上は会社などにも迷惑がかかったり、社内で噂が流れて居づらくなったりすることがありますので、素早い対応をすることが大切です。

給与差し押さえ解除・回避については、手続き的に複雑で、時間との勝負になりますので、ただ借金問題の解決に詳しいだけでなく、特に差押えの中止手続きに慣れた弁護士に早めに相談しましょう。

 

6.給与差し押さえはカヤヌマ国際法律事務所へご相談を

給料を差し押さえられても、個人再生や自己破産を利用することで差し押さえを解除し、その上で借金を減額・免除することが可能です。

給与差し押さえによる生活への影響は大きいですから、差し押さえをされたらできるだけ早い段階で法律の専門家である弁護士に相談されることをおすすめします。

また、まだ給料を差し押さえられていなくても、その後の差し押さえを防止するという観点からは、早い段階で債務整理を検討するメリットは極めて大きいです。できれば差し押さえ前の回避段階で弁護士にご相談ください。

カヤヌマ国際法律事務所は、給与差し押さえの解除手続に直結する個人再生・自己破産をはじめ、債務整理全般を多数扱っている法律事務所です。
東京都新宿区にあり、最寄り駅は丸ノ内線四谷三丁目駅で新宿駅から5分ほどの近場です。さらに四谷三丁目駅から徒歩1分程度の便利な場所にあります。

新宿区内の方はもちろん、近隣のエリア(千代田区、中央区、豊島区、中野区、杉並区、港区など)の方にとってもアクセスが大変良く、東京都全域、神奈川県、千葉県、埼玉県などの近隣地域からもご相談を受けております。

借金問題は早期解決が重要です。弁護士が受任後は債権者に対して受任通知を送付することで取立がストップするので、督促のストレスからも解放されます。
お悩みの方は、ぜひお早めにご相談ください。

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