奨学金返済の滞納による生活の破綻を防ぐために知っておくこと

滞納・督促

1.奨学金とは

そもそも奨学金とは、もともと能力がありながら、経済的な理由で進学などが困難な学生に対して、学費や生活費等を貸与若しくは給付する制度です。

奨学金というと、優秀な成績を収めた学生に対して、給付されたり、学費が免除されたりする制度を思い浮かべる方もおられると思います。そのような奨学制度もなくはないのですが、日本で最も利用者が多いのは、独立行政法人日本学生支援機構(旧日本育英会)が実施している奨学金制度です。

日本学生支援機構による奨学金制度は、貸与されるものであるため、借金であることに変わりはなく、卒業後に分割して返済することが必要です。

2.奨学金滞納が増えている理由

日本学生支援機構によると、奨学金の返済を滞納している人の数や滞納額が、年々増加しているようです。

その理由の一つは、学費が高く、借りる奨学金の額が高額であることがあげられます。

例えば、大学を卒業するために必要な学費は200~500万円程度といわれており、奨学金の利用者の多くが、同程度の金額の借り入れを受けている場合が多いのです。

仮に、400万円を借りたとすると、無利息で毎月2万円返済しても16年以上かかる計算となります。有利子の場合は、返済期間がもっと長くなります。

これに加えて、収入の低下があります。昨今の経済情勢において、正社員ではない非正規労働者として働かざるを得なかったり、正社員であっても給与が低かったりする等の理由により、奨学金の返済が困難になってしまっている方が増えているのです。

今や、大学全入時代とも呼ばれ、希望すれば、高望みさえしなければ、どこかの大学に入ることはそんなに困難ではない時代になりました。

逆に言うと、大学を卒業しただけでは珍しくも何ともないため、大学を卒業したからといって高収入の仕事に就けるわけではなくなってきたのです。

奨学金の返済は、卒業後すぐに始まります。しかし、特に社会人になりたての頃は、給与が低いのが一般的ですから、その中から返済に回すお金を作るのは大変という状況になりやすいのです。そのような状況が、毎月の奨学金の返済を延滞してしまうことにつながります。

ただ、奨学金の返済を延滞したまま放置してしまうと、様々な不利益があります。その不利益についてご説明します。

3.奨学金の返済を滞納するとどうなるでしょうか

3-1.延滞金の付加発生

奨学金の返済を2回以上滞納してしまうと延滞金が科されます。延滞金は利息とは別に発生しますし、延滞した期間が長くなればなるほど高くなってしまいます。延滞金の利息は、原則として5%発生しますので、延滞が長期間に及ぶと結構な金額になってしまいます。

また、第一種(無利息)で奨学金を借りている方であっても、延滞金は発生しますので、注意が必要です。

3-2.催促の連絡等

日本学生支援機構の場合には、奨学金の返済を1ヶ月分滞納しただけであれば、翌月に2か月分の合計金額が口座から引き落とされるだけで済みます。

しかし、2か月分以上滞納してしまうと、本人に対して督促の手紙や電話連絡があります。これを無視してしまうと、連帯保証人に連絡が行きます。連帯保証人は親や兄弟姉妹などの親族であるケースが多いのではないでしょうか。

3-3.債権回収代行会社による回収

奨学金の返済についての連絡や督促は、日本学生支援機構から業務委託されている債権回収会社から行なわれる場合もあります。

債権回収会社はいわゆるサービサーのことです。有名なところでは日立キャピタル債権回収、エム・ユー・フロンティア債権回収などがあります。

これらの債権回収会社は、消費者金融等の債権回収も行っている会社ですから、日本学生支援機構の担当者よりも厳しい対応がなされる可能性があります。

もっとも、債権回収会社は取り立て等の仕方について、法令で厳しく規制されているので、電話をかけることのできる時間帯(平日、休日ともに9時~21時の間に限られます)や訪問した場合にも直接現金で受領することは禁じられていますので、厳しい取り立てについてはそれほど心配することはないかもしれません。

3-4.連帯保証人への連絡

前述のように、滞納が2ヶ月以上続くと、連帯保証人へ連絡や督促が行なわれる可能性があります。連帯保証人へ滞納の事実を知られたくない場合は、滞納が続く前にきちんと対応することが大事です。

滞納前であれば、後で述べるような

  • 減額返還
  • 返還期限の猶予

を認めてもらえることがあります。返済が困難な場合には、滞納してしまう前に、学生支援機構の担当者と相談することが大事でしょう。

但し、これらの制度でも返済額の総額は減額されないことになっています。

3-5.信用情報機関への登録

奨学金も「借金」であることに変わりはありません。2008年に、日本学生支援機構が信用情報機関に加盟したことから、延滞等の情報は、信用情報機関へ登録されることになりました。現在、日本学生支援機構では、3ヶ月以上の滞納が続くと、信用情報機関に延滞情報の登録を行なうようです。

信用情報機関に奨学金でも延滞の情報が登録されてしまうと、他の様々なローンが組めなくなる可能性が生じます。クレジットカードの審査が通らなくなったり、車や自宅の購入の際のローンが通らなくなったりするおそれがあります。

3-6.支払督促等の裁判

滞納が8~9ヶ月程度続くと、分割返済ではなく、返済期日が来ていない分も含めて全額を一括で返済することを求められるようになります。これを「期限の利益の喪失」といいます。

そして、その後は、裁判手続きに移行する可能性が出てきます。一番多いのは、支払督促という手続きです(詳細は、→「給与差し押さえと解除方法」をご参照ください)。

日本学生支援機構が支払督促の申立てを行なうと、簡易裁判所から支払督促が送られてきます。

これに対応しないまま14日以上が経過すると、仮執行宣言が付いた支払督促が発令されます。

仮執行宣言付き支払督促に基づき、日本学生支援機構は財産(銀行口座や給与)の差押を行なうことが可能になります。

例えば、給与の差押が行なわれると、勤務先にも滞納の事実が発覚するだけでなく、勤務先の給与支払担当の方に負担をかけてしまうので、そのような事態になってしまう前に、何らかの対応をする必要があります。

4.機関保証を受けている場合

平成16年以降の奨学生については、日本国際教育機関が保証をしてくれる制度(いわゆる機関保証)を利用できるようになりました。

機関保証を受けている場合には、奨学金の返済を滞納をすると、同機関が代位弁済(代わりに一括弁済すること)を行ない、同機関が支払いの請求や督促を行なってきます。

日本国際教育機関においても、返済猶予の制度や一部免除等の制度があるので、放置することなく支払いについて相談してみることが大切です。

5.奨学金の滞納を解消するための方法

5-1.返済猶予制度

日本学生支援機構では、災害や傷病、失業、経済的困難等の理由によって返済が困難な場合は、「一定期間返済を停止し、先送りする」という制度があります。これを返還期限猶予制度といいます。

一定期間奨学金の返済を猶予してもらうことで、生活に支障が出ないようにする制度ですが、審査を受けて承認されることが必要です。延滞を起こす前に(延滞してしまった場合は速やかに)、申請をすることが大切です。

5-2.減額返還制度

約定どおりの返済は困難だけれども、月々半額程度であれば返済できるという場合は、日本学生支援機構の減額返還制度が利用できる場合があります。一定期間、返済額を、当初の返済額の2分の1に減額してもらえる制度です。

ただし、返済総額が減額されるわけではないので、返済期間が延びてしまうことに注意が必要です。減額返還制度も審査が必要ですが、審査の時点で滞納が生じていると適用されませんので、滞納が生じてしまう前に、早めに申請することが大切です。

6.奨学金返済の消滅時効について

一般的に、借金の支払い義務には消滅時効の制度があり、消費者金融等の借金は5年で時効によって消滅します。

しかし、奨学金の時効は10年となっており、奨学金の返済で時効を主張するのは難しいと言わざるを得ません。特に、近年は、日本学生支援機構が、奨学金の返還に力を入れてきていますので、時効になるまで放っておくなどということはなくなりました。

また、支払督促等の裁判になってしまうと、判決等が下されてから時効が完成するまで10年になるので、時効による消滅はほとんど期待できないと言えます。

従いまして、時効で消滅することを考えるのではなく、少しずつでも返済していくことや後に述べる債務整理の方法をとる方が現実的といえるでしょう。

7.奨学金の返済が困難な場合

上記のように、日本学生支援機構には、返済猶予の制度や減額返還の制度がありますが、いずれも滞納が続いてしまったりすると審査が通らずに利用できないこともあります。

また、延滞が続くと、前記のとおり一括返済を求められてしまい、最終的には財産の差押に到る場合もあります。

そのような事態を避けるためには、通常であれば、弁護士に債務整理を依頼することで、今後の返済について交渉をしてもらうという方法があります。

しかし、奨学金の貸与を受けた場合には、日本学生支援機構においては、そもそも一般の貸金業者に対してであればある程度の効果が期待できる任意整理には一切応じていないように見受けられます。

なぜなら、任意整理とは、将来利息をカットして、毎月の弁済額を減額することにより債務を整理する方法ですが、日本学生支援機構の場合は、利息も延滞金も一切免除には応じないことが機構としての対応方針だからです。近い将来において、そのような頑なとも言える対応方針が変更されるような兆候は現状では見当たりません。

8.奨学金の返済のために借金をしてしまった方へ

上記のとおり、奨学金の返済には、日本学生支援機構独自の返還猶予制度や減額返還制度があります。

しかし、これらの適用を受けないまま延滞を続けてしまったり、奨学金を返済するために、他の銀行や消費者金融、カードローン等から借り入れてしまったりした方もおられると思います。そのような場合は、奨学金だけの問題ではなくなっていますから、債務全体について弁護士による債務整理を行なうことが、生活の建て直しには必要不可欠となります。

そして、債務全体を見ると、分割返済したくともとても完済することが不可能な場合は、個人再生や自己破産をすることも一つの選択肢となるでしょう。最近では奨学金破産も多くなってきました。

ただ、奨学金の場合は、親が連帯保証人になったり、その他の四親等以内の親族がさらに保証人にとられるなど、人的保証による「人質」でがんじがらめになっているので、個人再生・自己破産による債務整理のハードルが極めて高いと言わざるを得ません。

個人再生や自己破産の場合には、債権者を公平に取り扱うことを制度上求められているので、債権者を選んで債務整理をすることはできませんが、任意整理では選ぶことが可能です。

ですから、どうしても保証人には迷惑がかけられない、という場合は、保証人が付いていない消費者金融等の借金だけについて弁護士による債務整理を行い、奨学金だけは、何とか支払いを継続するというのも、一つの方法です。

どの借金について弁護士による債務整理を行なうか、また、個人再生や自己破産をすべきかどうか等という点については、専門家である弁護士にそのメリットとデメリットを十分聞いて、正しい知識をもとに判断することが、借金の問題を解決する一番の近道といえるのです。

9.個人再生のおすすめ

9-1.連帯保証人の責任:一般の場合

連帯保証人付きの債務者(以下「主債務者」といいます。)が個人再生をしても、連帯保証人の債務額は減額等の影響は受けません(民事再生法177条)。

従って,一般論としては、主債務者が債務整理を行う際に支払いを一旦停止すると、分割弁済の期限の利益を失うため、債権者は連帯保証人に対して,その保証した債務額の全額について一括払いの請求をすることができるようになります。

そのため、連帯保証人がついている場合は、主債務者は連帯保証人に配慮して、債務整理をためらう場合が多いのではないでしょうか。また、連帯保証人も一括請求されることが通常ですので、その保証額によっては、連帯保証人自身が、個人再生や自己破産による債務整理を迫られることがあるでしょう。

9-2.日本学生支援機構の場合は?

しかし、日本学生支援機構の場合には、連帯保証人に対して一括請求はしないで、主債務者が延滞した分だけを請求するということです(同機構内の債務整理担当部である「法務課債務整理係」のお話です)。

そうしますと、連帯保証人の負担が一般の場合より相当軽くなり、その分主債務者は個人再生をしやすくなると言えるでしょう。

なぜなら、連帯保証人は、日本学生支援機構から奨学生が支払いを延滞している分だけ支払いを求められるので、分割弁済が可能であり、しかも、奨学生が個人再生により一部の支払いを日本学生支援機構に対して再開した場合には、その分だけ連帯保証人の支払い分が軽減されることになるからです。

もっとも、奨学生が個人再生による計画弁済を3年間~5年間継続して、計画弁済額を完済すると、その余の支払い義務を奨学金も含めて免除されるのですが、他方、連帯保証人については、奨学金の残額を弁済する義務を免れることはできませんので、依然として連帯保証人の支払い負担は大きいままであると言えるでしょう。

それでも、分割弁済は依然として認められるようですから、連帯保証人の支払い負担は一括弁済を求められた場合に比べると相当軽いと言えるかもしれません。

しかし、奨学金の残額が親である連帯保証人には分割弁済だとしても、そのままでは重すぎるというケースでは、親も個人再生、場合によっては自己破産を申し立てることで、支払い義務を軽減したり、免れる道がありますので、この点でも専門の弁護士にご相談されることをおすすめします。

10.自己破産のおすすめ

最後の債務整理の方法としては、自己破産があります。自己破産については依然として抵抗が強いのですが、免責が認められれば、奨学金もその他の借金も債務の支払いを全額免除されるので、生活のリセットがやりやすいという点では他の債務整理にはない大きなメリットです。

確かに、借りたものは返すのが本筋ですが、無理をしすぎるのは禁物です。本来なら奨学金は「貸与」ではなく、「給付」にすべきでしょう。我が国では、諸外国に比べて、学費の個人負担が重すぎる傾向にあると言えます。

「借りた」奨学金を返すことはあきらめて、勉強させてもらった成果をその分社会に還元したら良いのではないでしょうか。

例えば、奨学金の返済額が400万円あり、それを毎月3万円ずつ返済する場合を想定しますと、10年以上も奨学金の返済に縛られることになりかねません。奨学金の返済総額と毎月の返済額によっては、これが15年、20年とさらに長期間を要する場合もあるでしょう。

これだけの長い間、毎月多額の返済を強いられたら、社会貢献する余裕も機会もおおかた失ってしまう恐れがあるのではないでしょうか。

奨学金の返済について法的な債務整理を実行することでその負担を免れる(法律の手続きにより適法にです!)代わりに、奨学金を得て勉強し、研究したことで身につけた能力を発揮していただいた方がずっと奨学生のためにも社会のためにも宜しいのではないでしょうか。

そう考えると、奨学金の返済義務を免れるために自己破産の道を選ぶことについて、それほど強い非難を浴びせるべきではないと考えられますし、奨学生はそれほど強い罪悪感を抱く必要はないと思われます。その分、社会貢献したら良いのです。
連帯保証人についても、上記のとおりであり、自己破産はおすすめできる債務整理の方法です。

11.奨学金の債務整理をお考えの方はお問い合わせください

カヤヌマ国際法律事務所では債務整理のご相談を初回については無料で受けております。自己破産を含め、債務整理を行うことで、人生をやり直すことができるケースが非常に多くあります。債務整理の経験豊富な弁護士が対応いたしますので、ご安心ください。

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