自己破産でしてはいけない名義変更

自己破産

自己破産でしてはいけない名義変更

自己破産をすると、破産手続きによって所有する財産が処分されてしまうことがあります。
ならば財産を第三者名義に変更してから自己破産を申し立てよう、と考える方もいるかもしれません。

しかし、自己破産前に名義変更を行うと、破産法で禁止されている財産隠し(資産隠し)に該当し、さまざまな弊害が生じ、免責どころではなくなってしまうおそれがあります。

ですから自己破産を検討する際には、

  • ご自身の判断で財産の名義変更を行う前に、必ず弁護士までご相談ください。
  • また、既に「名義変更をしてしまった!」という方がもしいらしたら、救済の道が見つかるかもしれないので、お早めに弁護士へ相談することをお勧めします。

今回は、自己破産前に財産の名義変更を行うことにつき、破産法上の問題点を解説します。

【この記事を読んでわかること】

  • 自己破産で問題となる名義変更の種類
  • 自己破産の直前に名義変更をするとどうなるか
  • 既に名義変更をしてしまった場合どうすればいいか

 

1.自己破産前に行いがちな名義変更の例

破産手続きでは、99万円以下の現金や生活必需品などの一部(自由財産と言います)を除き、多くの財産が換価・処分の対象となります。

財産の処分を回避するために、破産者があらかじめ財産の名義変更を行うケースが見られます。
特に以下の財産について、自己破産前の名義変更が行われがちです。

1―1.車の名義変更(所有権移転)

耐用年数が経過して市場価値が全くない場合などを除き、車は破産手続きによる換価・処分の対象となります。

車は高価であり、かつ生活における重要性も高いため、破産手続きによる処分を回避する目的で、あらかじめ名義変更を行う方がいらっしゃいます。

1―2.持ち家の名義変更(所有権移転)

持ち家の土地・建物は、一般的に高い市場価値が認められるため、破産手続きによる換価・処分の対象となります。

生活環境を変えたくない、愛着のある家を手放したくないという思いから、自己破産を申し立てる前の段階で、家族・親族などに持ち家の名義を変更する方がいらっしゃいます。

なお、車・持ち家については、遅延なくローンを支払っている最中であっても、通常は抵当権等の実行により処分の対象となるでしょう。

1-3.携帯電話の名義変更(契約者変更)

携帯電話の端末代金を分割払いしている場合、残代金は自己破産による支払い免除の対象となります。

ただし携帯電話会社は、残代金債権につき担保権(所有権留保)を有しているのが一般的です。その場合、破産手続き外で担保権(別除権)を実行し、債務者に対して携帯電話端末の引渡しを求めることができます(破産法65条1項)。

担保権が実行されると、携帯電話端末を失い、生活上の大きな不便が生じてしまいます。
そのため、担保権実行による携帯電話端末の処分を回避する目的で、自己破産を申し立てる直前に名義変更を行うケースがあるようです。

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1―4.生命保険の名義変更(契約者変更)

生命保険の解約返戻金請求権は、その返戻金の金額にもよりますが、破産手続きにおいて債務者の財産として取り扱われます。
したがって、破産手続きでは(破産管財人によって)生命保険が解約され、解約返戻金が債権者へ配当されることになります。

生命保険の解約、および解約返戻金の債権者への配当を回避するため、自己破産を申し立てる前に、生命保険の契約者を家族・親族などへ変更する例がしばしば見られます。

 

2.自己破産する前に名義変更を行ったら

上記のような名義変更を、自己破産の申立て前(破産手続き中であっても同様)に行うと、以下の弊害が生じるおそれがあります。

2―1.破産管財人による否認の対象になる

自己破産を申し立てようとしている状況で財産の名義変更をすると、破産者の財産を流出させる「財産減少行為」と評価され、破産管財人による詐害行為否認の対象となる可能性があります(破産法160条、161条)。

名義変更の際に、破産者が譲受人から相当の対価を得ているかどうかによって、詐害行為否認の要件が以下のとおり異なります。

  • 相当の対価を得ていない場合
    以下のいずれかに該当する場合に、詐害行為否認の対象となります(破産法160条1項、3項)。
    (a) 破産者が破産債権者を害することを知って名義変更をした場合(名義変更によって利益を受けた者が、名義変更の当時、破産債権者を害することを知らなかった場合を除く)
    (b) 名義変更が破産債権者を害するものであり、かつ破産者の支払の停止または破産手続開始の申立て以降に行われた場合
    (c) 名義変更が無償または無償と同視すべき有償にて、破産者の支払の停止後またはその前6か月以内に行われた場合
  • 相当の対価を得た場合
    以下の要件をすべて満たす場合に限り、詐害行為否認の対象となります(破産法161条1項)。
    (a) 名義変更が、不動産の金銭への換価など財産の種類を変更するものであり、破産者において隠匿・無償の供与その他の破産債権者を害する処分をするおそれを現に生じさせるものであること
    (b) 破産者が、名義変更の当時、対価として取得した金銭等について、隠匿・無償の供与その他の破産債権者を害する処分をする意思を有していたこと
    (c) 名義変更の相手方が、名義変更の当時、破産者が(b)の意思を有していたことを知っていたこと

破産管財人によって否認権が行使された場合、名義変更の対象となった財産は破産財団に復帰し、破産手続きによる換価・処分の対象となります(破産法167条1項)。

2―2.免責不許可事由に該当する

自己破産の申立て前または手続き中に、債務者財産の名義変更を行った場合、以下の「免責不許可事由」(破産法252条1項1号)に該当する可能性があります。

債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。

免責不許可事由が存在する場合、原則として破産免責が認められません。つまり、自己破産を申し立てたにもかかわらず、債務が免除されずに残ってしまうことになります。

なお後述するように、裁判所の判断により、免責不許可事由があっても裁量免責が認められる可能性はあります(同条2項)。
しかし、裁量免責が認められるかどうかは不確実であるため、自己破産の申立て前または手続き中の名義変更は避けるべきです。

2―3.詐欺破産罪により処罰される

尚、破産手続開始の前後を問わず、名義変更行為は、破産法265条で定める「詐欺破産罪」として処罰(10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金)される可能性があるので、厳に慎みましょう。

 

3.名義変更をした場合に裁量免責を認めてもらうには

自己破産に関するルールを十分に把握していなかったため、申立て前に財産の名義変更をしてしまってから弁護士へご相談にいらっしゃる方も多いです。

前述のとおり、自己破産申立て前の財産の名義変更は、免責不許可事由に該当する可能性が高いです。もし免責不許可事由に該当する場合、裁判所に対して裁量免責を求めていくことになります。

裁量免責の可否は、裁判所の完全な裁量によって決まるため、何をすれば裁量免責が認められるかについては一概に言えません。
債務者としてできるのは、名義変更について悪意がなかったことや、二度と破産を繰り返さないことについての意思や計画を、裁判所に対して誠実に説明することなどです。

裁量免責が認められるかどうかは不確実ですが、弁護士のサポートを受けながら裁判所への説明を尽くすことで、免責を受けられる可能性が上がると考えられます。

弁護士が親身になって、免責による救済の道を探りますので、まずは一度弁護士までご相談ください

 

4.自己破産をする場合は弁護士にご相談を

自己破産を申し立てる場合、手続きの準備や破産手続開始決定後の対応につき、多大な時間と労力を要します。
今回名義変更に関して紹介したように、破産管財人による否認・免責不許可事由・詐欺破産罪など、注意すべき問題点も山積です。

弁護士にご依頼いただければ、自己破産に必要な手続きを全面的に代理いたしますので、時間と労力をかけずに破産申立てを行うことができます。
また、自己破産に関する注意点を十分に踏まえて手続きを進めますので、スムーズに破産免責を受けられる可能性が高まります。

特に、自己破産の申立て前の名義変更については、一度行ってしまうと、その後の破産手続きにおいて支障が生じる可能性が高いです。そのため、ご自身の判断で名義変更をする前に、必ず弁護士までご相談ください

また、もし知らずに名義変更を行ってしまった場合には、弁護士が救済の道を探るべく尽力いたしますので、いずれにしても弁護士までご連絡いただけますと幸いです。

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