住宅を差し押さえられたら?

住宅を差押えられ、競売が始まったら、もう住宅を守ることはできないのでしょうか?

1.差押えにはどのような場合があるでしょうか?

確かに、差押え(「仮差押え」の場合を含みます。)の状況には非常に厳しいものがありますが、あきらめなければ、まだ住宅を失うという最悪の事態を避けることができる場合があります。

まず、冷静に確認する必要があることは、どんな債権者がどのような理由により住宅を差押え又は仮差押えしてきたのか、ということです。

大まかに分けると、以下の4つの場合が想定されます。

  1. ①抵当権のない一般債権者である場合
  2. ②抵当権のある住宅ローン債権者の場合
  3. ③税金等の滞納があるときに税務署などが行う滞納処分の場合
  4. ④抵当権のある債権者であるが、住宅ローン債権者ではない場合

2.抵当権のない一般債権者が差押えした場合について

個人再生申立のおすすめ

もし、抵当権のない一般債権者が差押えをしてきた場合には、借金の件数が多かったり、件数はそれほど多くなくとも金額自体が大きいときは、個人再生の申立が差押えられた住宅を守るために極めて有効な対応策となり得ます。

一般債権者に住宅を差し押さえられるというのは、そう頻繁に発生する事態ではなく、借金の件数が多くて多重債務者になっているケースが多いのではないでしょうか。
また、借金の額が大きくて、一括では支払うことができないので、債権者に分割払いを申し出たのに直ぐ払えの一点張りで、交渉に応じてもらえなかった、というようなケースがよくあります。

個人再生申立の大きなメリットは?

このような場合、個人再生の申立には大きなメリットがいくつもあります。

①裁判所の中止命令・再生手続開始による当然中止

第1に、個人再生を申立てた場合には、住宅の差押えという強制執行については、個人再生の開始前であっても、裁判所に中止命令を出してもらうことができます(民事再生法26条1項2号)。
さらに、裁判所が再生手続開始の決定を出せば、その開始決定には、住宅差押えによる強制執行を中止する効果が認められています(民事再生法39条1項)。
したがいまして、個人再生を申立てたままで、その開始決定前に裁判所に対して中止について何ら申立をしないでいても、裁判所が再生手続の始決定を出せば、住宅差押えによる強制執行手続は当然に(つまり、中止を求める申立なしに)、中止となります。

②債務額の大幅な減額

第2に、これが個人再生手続を利用する極めて大きなメリットとなりますが、住宅を差し押さえてきた債権者の分も含めて(!!)、一般の債権者に対する債務額を、場合によってはということですが、80%から90%もカットしてもらえることができます。例えば、債務額が1000万円あったとしますと、80%カットで、200万円だけ支払えば、残りは免除してもらうことが可能となります。
なお、具体的なケースにおいては、持てる財産の処分価値に相当する金額は支払いなさいという「清算価値保障の原則」や、給与所得者等再生においては、「可処分所得額」の2年分という基準が計画弁済額として求められますので、支払額が200万円を越える場合があり得ます。

③差押えの失効・取消

第3に、自宅を差押えた強制執行の行方ですが、再生手続開始により中止となっていた住宅差押えにかかる強制執行手続は、再生計画の認可決定が確定した場合には、「失効」してしまいます(民事再生法184条)。
「失効」とは、強制執行手続として維持されないことを意味します。さらに具体的な手続としては、差押えを発令した個別の執行裁判所に対して差押えの取り消しを申立て、これを認める執行裁判所が住宅への差押え登記の抹消を法務局に嘱託することになります(条解971頁)。
差押登記の抹消までには、さらに少しの時間と手間がかかりますが、これが済めば住宅を差押えられたという重圧から完全に解放されます。

3.抵当権のある住宅ローン債権者が差押えした場合について

個人再生申立のおすすめ

それでは、抵当権のある住宅ローン債権者が住宅を差し押さえてきた場合はどうでしょうか?
この場合には、すでに住宅ローンを相当長期間滞納しているはずです。1ヶ月、2ヶ月の滞納では、通常住宅の競売が開始されることはありません。
住宅ローンを滞納したために、競売が開始され、住宅を差し押さえられたときでも、個人再生の申立をすることで住宅を失わないで済む場合があります。かかる意味において、個人再生の申立には大きなメリットがあります。

6ヶ月以内の申立~申立期限にご注意!

ただ、極めて重要で、注意を要することは、住宅ローンの保証会社が住宅ローンの主たる債務者に代わって銀行等の住宅ローン債権者に代位弁済してから、6ヶ月以内に個人再生を申し立てることです。この期限を過ぎてしまうと、住宅ローン特則(法律上は「住宅資金特別条項」が正式な呼び方です。)を利用できなくなるからです。

これとは反対に、たとえ、保証会社が代位弁済をしていても、そこから6ヶ月以内に、個人再生を申立て、住宅ローン特則を利用する場合には、住宅を確保できる可能性が出てきます。
再生計画の中で住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を定め、その再生計画が最終的に裁判所により認可され確定すると、保証会社の代位弁済ははじめからなかったことになります(!!)。
その結果、銀行等の住宅ローン債権者の住宅ローン債権が復活する取り扱いとなります。これを「巻き戻し」といいます。

住宅ローンを滞納して、抵当権の実行となる競売が開始され、自宅を失いそうなときは、とにかくできるだけはやく弁護士にご相談されることをおすすめします。

銀行等との事前「協議」必要・「同意」不要

住宅ローン特則を定めるに際して、銀行等の住宅ローン債権者と事前に「協議する」ことは必要ですが、必ずしもその「同意」を得ることは必要ではありません。延滞金が発生している場合には、期限の利益単純回復型においては、計画弁済の期間中に延滞金を支払い切るプランを盛り込む必要はありますが、慎重に支払い可能な計画を立て、裁判所の認可を得ることを目指しましょう。
*→「住宅ローン特則」をご参照ください。

裁判所の認可決定が確定すれば、一括払いを求められていた住宅ローンについて期限の利益を回復し、再度分割払いとすることを認めてもらえるのです。これにより、頑張って計画弁済を全うできれば住宅を失わないで済むでしょう。

競売手続はどうなる?中止できるか?

それでは、個人再生を申し立てると、住宅の差押えで開始された抵当権の実行手続(競売)はどうなるでしょうか?
民事再生手続を申し立てた後、裁判所に対して抵当権の実行手続の中止命令を申し立てることができます(民事再生法197条1項)。この申立を受けた裁判所は、競売申立人(住宅ローン会社もしくは保証会社)の意見を聴いたうえで(民事再生法31条2項)、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を定めた再生計画の認可の見込みがあると認めるときには、相当の期間を定めた中止命令を出してくれます。中止命令を得ることで、競売手続を中止することができます。

競売手続が失効する場合は?

住宅が競売にかけられている場合でも、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用した再生計画の認可決定が確定すると、競売手続は失効しますので、自宅を確保できる道が開けます。

4.滞納処分の場合について

税金等の滞納があるときに税務署などが行う滞納処分の場合はどうなるでしょうか?
滞納処分を個人再生の申立により法律上当然に止める規定はありません。
したがいまして、滞納処分を受けた場合には税務署等とよく協議をして、分割弁済などの支払計画について了解を得て、滞納処分を一旦おさめてもらうことが必要となります。

5.住宅ローン債権者以外の抵当権者が差押えした場合について

最後となりましたが、住宅を差押えた債権者が抵当権のある債権者ではあるが、住宅ローン債権者(保証会社を含みます)でない場合はどうなるでしょうか?

抵当権に問題がない場合は?

まず、原則論から説明しますと、破産手続でも、民事再生手続でも、抵当権の実行を当然に止めることはできません。むしろ、抵当権は、債務者が借金を返せない場合にそなえて、債権者が貸金の回収を確保するための重要な手段となるものですから、まさに債務者が破産したときなどに、抵当権のない一般債権者に優先して抵当物件から回収できることでその威力を発揮するものです。
抵当権の成立・存在自体に問題がなければ、通常は、競売手続は破産手続や民事再生手続の進行状況に何ら影響されることなく、どんどん進められていきます。そして抵当物件を競売しても回収できない債権が残った場合には、その限度で破産手続や民事再生手続に参加することになります。

抵当権に問題がある場合は?

しかし、抵当権の成立・存在自体に問題がある場合は、その問題を裁判手続で主張することが必要となります。例えば、抵当権の不存在を主張して執行異議や執行抗告を申し立てる方法などです。
これらの申立をしただけでは競売手続自体の進行を当然に止めることはできませんので、「執行停止」の申立をして、原則的には法務局に担保金を供託してから競売手続を停止する旨の決定を得て、競売手続を止めます。そして、本裁判で抵当権の不存在を主張・立証することとなります。

サラ金業者ら高利業者が抵当権者の場合~過払い金のチェック!!

特に注意していただきたいのは、サラ金業者などの高金利業者から多額の借入をして、その債務のためにサラ金業者らが住宅に抵当権を設定した場合です。
借入の元金が100万円以上になると、利息制限法上の制限利息は年15%ですから、約定利率がこれを越えて20%前後であるような場合には、とりわけ注意が必要です。
このような場合には、長期間弁済を続けることで、引き直し計算後の元本が約定元本より大幅に減額されていたり、場合によっては残債がゼロとなったうえに過払金が発生していることもあるからです。
このように過払金が生じた場合には、サラ金業者らの貸付金を担保する抵当権は消滅していますので、競売を実行することはできなくなります。
このような事案の場合にも、弁護士に早急にご相談されることをおすすめします。当事務所ではいつでも無料相談を行っています。