個人再生の借金減額幅/最低弁済額は?

個人再生

1.個人再生とは

個人再生とは、多重債務等が原因で借金の返済が困難な場合に、借金の総額をおよそ80%~90%圧縮し、大幅に減額された残りの借金を、原則として3年間で分割して返済していく、という裁判所が関与する債務整理手続です。

減額された後の借金を完済すれば、残りの大部分の借金については、法律上支払う義務が免除されます。

裁判所が関与する債務整理手続には、支払い義務を原則として全額免除してもらう自己破産もありますが、自己破産を行うと、生活に最低限必要な財産(自由財産)を除いて、持てる財産はすべて処分しなければなりません。

これに対して、個人再生では、住宅ローンを支払中の自宅や、ローンがついていない自動車などの財産について処分を強制されることはないので、どうしても処分したくない財産がある場合には個人再生を利用するメリットが大きいでしょう。

では、個人再生により、支払わなければならない借金額は具体的にいくらぐらいになるのでしょうか。

以下においては、個人再生において最低限支払う債務の限度額について詳しく説明します。

2.最低弁済額

個人再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があり、最低限弁済しなければならない債務額の基準に違いがあります

小規模個人再生、給与所得者等再生のいずれにおいても、「最低弁済基準額」と「清算価値保障原則」の適用があり、給与所得者等再生においては、さらに「可処分所得基準(可処分所得要件)」というものが追加されます。

2−1.最低弁済基準額(共通)

個人再生の手続きを行った場合、計画弁済により支払わなければならない最低弁済基準額が法律で定められています。その最低弁済基準額は下記一覧表のとおりです。

借金の総額(住宅ローン除く) 減額後の支払額(最低弁済基準額)
100万円未満 借金の全部(減額されない)
100万円以上500万円以下 100万円
500万円を超え1,500万円以下 借金総額の5分の1
1,500万円を超え3,000万円以下 300万円
3,000万円を超え5,000万円以下 借金総額の10分の1

例えば、債務額が400万円の場合には、100万円支払えば足りるので、残り300万円は免除されることになります。

また、借金額が3,000万円〜5,000万円の場合、最大で90%も債務が減ることが分かります。

2−2.清算価値保障の原則(共通)

個人再生においては、上記の最低弁済基準に従った最低弁済額を分割して支払っていくことが通常ですが、再生計画が認可された時点の保有財産が上記最低弁済額を超える場合は、その財産相当額分を計画弁済として支払う必要があります。これを清算価値保障の原則と言います。

個人再生においては、自己破産のように財産を強制的に処分されることはありません。そのかわり、財産処分を免れるためには、少なくとも自己破産をした際に処分される財産の総額程度は返済する必要があるのです。

この場合の財産とは、仮に自己破産をしたとすると処分しなければならない財産を指しています。ですから、自己破産をしても処分されない財産(自由財産)については含まれません。

2−3.可処分所得基準(給与所得者等再生のみ)

給与所得者等再生は、小規模個人再生を利用できる者のうち、サラリーマン(給与所得者)のように、給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれるときに利用することができます。

小規模個人再生においては、借金の減額について頭数又は債権額において過半数以上の債権者の同意が必要となりますが、給与所得者等再生では債権者の同意がそもそも制度上求められていませんので、この点が給与所得者等再生のメリットとなるでしょう。

ただし、給与所得者等再生には、さらに可処分所得基準があります。これは、最低弁済基準額と清算価値相当額のいずれもが、債務者の可処分所得の2年分よりも低い場合は、可処分所得の2年分相当額を返済しなければならないとする基準です。

このように、給与所得者等再生では減額幅を小さくすることで、同意が不要とされている債権者保護が図られていると言えます。

可処分所得の計算

可処分所得は、下記計算式で算出されます。

<計算式>
可処分所得=1年間の収入-(所得税や住民税などの税金+社会保険料+最低限度の生活費)

このうち、「最低限度の生活費」は、法令で項目及び具体的な金額自体が決められており、居住している地域や世帯の人数、債務者の年齢等よって異なります。

例えば、36歳の独身男性が横浜市内に居住していて、税金及び社会保険料を控除した2年間の手取りの平均年収が年380万円だとした場合、「最低限度の生活費」は、下記の表のとおり、年間2,239,000円になります。

個人別生活費 499,000円
世帯別生活費 527,000円
冬季特別生活費 16,000円
住居費 642,000円
勤労必要経費 555,000円
合計 2,239,000円

そこで、1年間の可処分所得は、

3,800,000円-2,239,000円=1,561,000円

と算出されます。可処分所得基準はこの2年分となりますから、上記事例では、

1,561,000円×2年分=3,122,000円

となります。この金額が可処分所得基準による最低限度の弁済額となります。

3.個人再生手続における返済額

個人再生手続においては、以上ご説明したとおり、

小規模個人再生⇒【最低弁済基準額】と【清算価値】の高い方の額
給与所得者等再生⇒【最低弁済基準額】と【清算価値】と【可処分所得2年分】の3つを比べて最も高い額

が計画弁済額となります。これを原則として3年(特別の事情がある場合は5年)で分割して返済することになります。

この返済の計画を再生計画といい、個人再生手続の中で裁判所に計画を認可してもらった後に、実際に再生計画に従って支払いをしていくことになります。

この裁判所が認可した再生計画どおりに返済を行った場合、個人再生を申し立てた時点では残っていた借金を支払う必要はなくなります。つまり、再生計画で決まった金額以上の返済をする必要はなくなり、返済すべき債務総額を減らすことができるということです。

4.小規模個人再生と給与所得者等再生の選択

サラリーマンのように毎月ほぼ一定の収入がある方の場合、個人再生を行うにあたって、小規模個人再生と給与所得者等再生のいずれをも選択することができます。

ここで、再度上記36歳の独身男性に登場していただきます。この男性の場合、債務額が400万円で、総額100万円以上の財産はないとします。

もし、この男性が給与所得者等再生により個人再生を申し立てると、可処分所得基準による最低弁済額が最も高額となりますので、計画弁済額は3,122,000円となります。

これに対して、小規模個人再生を選択すると、可処分所得基準の適用はなく、最低弁済基準額による最低弁済額が最も高額となりますので、計画弁済額は1,000,000円で済みます。

単身者世帯の場合などには、可処分所得基準が特に高額となる傾向があります。そのため、個人再生の申立は給与所得者であっても小規模個人再生を選択できるので、申立案件全体の90%ほどの圧倒的多数が小規模個人再生を利用するのが実情です。

もっとも、個人の方にとっては、清算価値や可処分所得がいくらになるかを計算するのが困難なこともあるかと思いますので、専門家である弁護士にご相談されることをおすすめします。

また、最低弁済額が異なるだけでなく、債権者の同意が必要かどうかという点においても、小規模個人再生と給与所得者等再生には違いがあります。

このような点も踏まえて、いずれを採るべきかについては、専門家のアドバイスを受けてから決められるのが良いといえるでしょう。

5.個人再生の相談はカヤヌマ国際法律事務所に

個人再生を検討する場合は、一人で悩まずに是非弁護士にご相談ください。

個人再生以外にも、カヤヌマ国際法律事務所は、任意整理・自己破産等の債務整理案件を多く扱っており、その実績も非常に豊富です。借金問題は早期解決がとても重要ですので、早めのご相談をおすすめします。

カヤヌマ国際法律事務所は、丸ノ内線「四谷三丁目駅」から徒歩1分程度の場所にあります。このようにアクセスが良好で、新宿区以外でも、近隣エリア(港区、千代田区、中央区、豊島区、中野区、杉並区など)はもちろんのこと、さらに東京都全域、神奈川県、千葉県、埼玉県からもご相談をお受けしております。

当サイトをご覧いただいた方には、正式なご依頼を受ける前の法律相談を何回でも無料(1回のご相談は2時間以内)とさせていただいておりますので、ご納得いただくまで弁護士と相談することができます。

弁護士に相談し債務整理に踏み切ることで、悩んでいた借金問題がスッキリ解決し、新しい人生をスタートすることができます。

ご相談の予約はこちらのお電話もしくはメールフォームから可能です。