任意整理
任意整理とは
任意整理とは、債務整理の中でもメリットが比較的多い債務整理方法です。債権者と裁判外で直接交渉し、基本的には、将来発生する分の利息をカットするなどして、借金返済を容易にする方法です。実は、一部の「借金」に過払い金が発生している場合がありますが、全体の債務整理がとても楽になることがあります。
借金をした側(債務者)がお金を貸した側(債権者)に一方的に利息カットをお願いしてもなかなか通るものではありませんが、弁護士などが間に入ることで、債権者と交渉(ここでの交渉は、裁判所を介さずに行われます)し、借金を返済しやすくします。
任意整理のメリット・デメリットまとめ
- メリット
- 支払い督促をストップ
- 将来の利息カット
- 借金元本を減額できる場合あり
- 裁判所を介さずに処理できる
- 借金の理由が問われない
- 債権者を選べる
- 破産のような職業・資格制限は無い
- 官報には掲載されない
- 生命保険を解約する必要がない
- 自動車ローンは解約する必要がない
- 住宅ローンは解約する必要がない
- デメリット
- 借金の減額幅は小さい傾向
- ブラックリストに載る
- 給与の差押えを解除できない
- 業者(債権者)と和解できないことがある
任意整理の流れ
任意整理のメリット
1.支払い督促がストップする
精神的に多大なストレスとなる「支払い督促」が一時ストップします。これは、債務整理を受任した弁護士が債権者に「受任通知」を送ると、法の定めにより、債権者は直接債務者に支払いを要求することが出来なくなるためです。弁護士が受任通知を送付すると、弁護士が「代理人」として、その後の債権者との交渉手続を引き受けて進めることになります。
2.将来の利息分のカット
任意整理では、将来発生する分の利息をカットし、トータルの返済額を減らして返済を楽にします。利息制限法を越えない金利でも年15%~20%は認められていますが、これは相当に高額な負担をもたらします。利息をカットし、元金だけの支払いにしてもらえるだけでもかなり支払いが楽になります。
例えば、全部で200万円の借金があり、その借入金利が平均して年15%だとします。この場合には、仮に利息だけの支払いに止めたとすると毎月およそ2万5000円の利息を支払い続けることになります。
かりに、毎月5万円弁済できるとしても、元金の支払いとして認められるのは当初は半額の2万5000円ほどですから、毎月5万円の支払では完済するまでには、57回の分割払いとなるので、4年9ヶ月の長期間となります。支払い総額は元金200万円と利息の総額がおよそ金789,700円となります。合計では2789,700円の高額です。
もし、この15%の利息をすべてカットしてもらえれば、支払額は元金のみの200万円であり、毎月5万円ずつ支払えば、40回払いで完済ですから、3年半でけりがつくという話になります。
利息カットだけでも相当に支払いが楽になることは実感としてご理解いただけるのではないでしょうか。
3.借金元本の減額など
当事務所では取引履歴を債権者に開示してもらい、利息制限法を越える約定利息がある場合には必ず利息制限法に基づいた再計算を実施します。この利息の再計算を行うことによって借金の元本自体を減額し、場合によっては元金の払い過ぎになって過払い金が生じている場合があります。一部でも過払い金が発生すると、元金自体が減額されることになるので、任意整理がかなり楽になることがあります。
当事務所ではある債権者から取り戻した過払い金を支払い資金にして他の債権者に対する残債務を支払い、結果的にはご相談の方は自らは一円も出すことなく、借金の整理が済んだという事案もありました。この場合には、弁護士費用も過払い金で精算し、さらにご相談の方に過払い金残金をお渡しできました。その方には大変感謝していただいたことも申し添えておきます。
※過払い金返還請求の詳細については、「過払い金」のページをご参照ください。
4.裁判所を介さずに処理できる
自己破産・個人再生などでは、裁判所での手続・出頭が必要ですが、任意整理では、裁判所を介さずに、弁護士が債権者と直接交渉を行いますので、裁判所は不要です。
但し、過払い金が発生して、取り戻しのための訴訟を提起する場合は別となります。この場合でも、受任した弁護士は裁判所に出頭しますが、ご相談・ご依頼の方が裁判所に出頭する必要はほとんどありません。
5.借金をした理由が問われない
例えば、自己破産しても免責不許可事由として債務免除が認められない浪費やギャンブルなどによってできた借金であっても、任意整理の場合には免責不許可事由に該当するかどうかを検討することなく、手続をすすめることができます。
6.対象の債権者を選べる
自己破産などでは、借金を全額支払えない状態と知りながら、一部の債権者のみに先に返済をすること(偏頗弁済と言います)は禁じられていますが、任意整理ではやむを得ない場合には可能です。例えば、勤務先の会社から借金している場合に、その債務だけは従前どおりに支払い続けて、貸金業者に対する債務についてのみ任意整理をするといった方法も可能です。
7.直接仕事に影響しない(資格制限が無い)
自己破産の場合、免責が確定する(免責決定)までの一定の期間、一部の職業の方はその職に就けなくなることがあります(不動産鑑定業、保険外交員など)が、任意整理の場合には、そういった「資格制限」はありません。仕事を続けながら任意整理をすることが出来ます。
8.官報には掲載されません
裁判所を介さない任意整理であれば、国が発行する官報には記載されないため、職場や学校の方、ご家族に内緒で借金整理が可能です。(もちろん、弁護士からの連絡方法もご相談に応じます。)
9.生命保険を解約する必要がない
生命保険は任意整理では影響しません。
10.自動車ローンは解約する必要がない
自動車ローンを組んでいる方は、任意整理を行う際に債務整理の対象としないで従前どおりの支払いを続けることで解約しなくても済みます。逆に、自動車ローンも任意整理の対象とし、手放すことは可能です。この場合には業者に自動車を引き取ってもらい、引き取り価格を査定して債務額から差し引いた残額について分割弁済の約束を取り付けることになります。
11.住宅ローンは解約する必要がない
住宅ローンを組んでいる方は、その他の高金利のカードローンや消費者金融からの借金のみ任意整理を行うことができます。この場合には、住宅ローンは支払い続けることになるので、解約する必要はなく、住み続けることができます。
任意整理のデメリット
1.借金の減額幅は小さい傾向
個人再生と比べて借金の減額幅は小さくなります。特に、法定金利内で取引している金融会社からの借入の場合や、取引期間が短い場合などはほとんど債務元金が減額できません。
2.ブラックリストに載る
いわゆる「ブラックリスト」と呼ばれる、個人信用情報機関に事故情報として登録されるため、一定期間(5~8年程度)は新規に借金をしたり、新規にクレジットカードを作ったりすることが出来なくなります。これは任意整理のデメリットというより、債務整理全般にかかわることです。
もっとも、支払いが困難な状況を放置して、何ヶ月も支払わないままにしておくと、任意整理を始めなくとも、結局のところブラックリストに載ることになるので、そもそも任意整理の着手によりブラックリストに載ること自体はデメリットとはいえないかも知れません。
支払いが困難になったところで、ブラックリストに載ることはむしろ覚悟して、早期に債務整理に着手すべきでしょう。ブラックリストに載ることをおそれるあまりに、債務整理への着手を先延ばしにすると、かえって傷を大きく、かつ、深くするリスクが一般的にはあります。
3.給与の差し押さえの解除は出来ない
債権者が給与等を差し押さえている場合、任意整理は裁判所が介入する手続きではないため、給与差押えを直ちに解除することができません。