税金を滞納すると、高率の延滞税が発生したり、給与を差し押さえられたりと様々な不利益が生じます。滞納の原因が「借金」にある場合は、一刻も早く弁護士に「債務整理」を依頼し、身軽になって税金滞納を解消しましょう。
ここでは、税金滞納を続けると具体的にどうなるかという点から解説していきます。
なお、税金滞納を続けた結果、既に法的措置を取られてしまったという方・差し押さえ解除をご希望の方は、以下のコラムをご覧ください。
1.税金滞納の影響
納税は国民としての義務です。
とはいえ、家賃の支払いや公共料金のように滞納すると生活に支障が出てしまうものや、厳しい督促がある民間からの借金に比べると、ついつい支払いを後回しにしがちです。
まず、税金の滞納を続けると、どのような影響があるのかを見ていきましょう。
1−1.高率の延滞税が発生
税金を期限までに支払わないと、延滞金(延滞税)が発生します。
特に、納期限から2か月を過ぎてしまうと、その率は14.6%と極めて高率になってしまうことがあります。
高率の延滞税が累積して、支払額が大きくなってしまう前に対処する必要があるでしょう。
1−2.財産の差し押さえ
税金等以外の一般の債権(カードローンなど)の場合は、裁判所を介した法的手続によって、執行宣言付き支払命令や判決などの「債務名義」を手に入れないと、債務者の財産を差し押さえることはできません。
しかし、税金等については、法律上、これらの裁判手続なしに納税義務者の財産を差し押さえることができます。
地方税法では、地方団体の徴税吏員は納税者が税金を納期限までに納めない場合には、「納期限後20日以内に」督促状を発しなければ「ならない」と定められています。
さらに、納税者が督促を受けて、督促状を「発した日」から10日後までに税金を「完納」しない場合には、滞納者の財産を差し押さえなければ「ならない」と徴税吏員に対して「命令」しています。
ここで注目すべきことは、差し押さえができるのは、督促状を「発した日」から10日経過後となっている点です。
滞納者が督促状を実際には受け取っていなくとも、発送していれば滞納者の財産を差し押さえることができるということです。
ですから、引っ越していて郵便物を受け取っていない、郵便物は届くが中身も見ずに放置しているなどのケースでは、ある日突然、財産の差し押さえを受けることになるでしょう。
とは言え、実際には税金を延滞した場合でも、短期間でいきなり財産を差し押さえられるという事態はありません。
事前に役所から督促状が郵送されてきたり、電話連絡などが試みられたりするはずです。
1−3.勤務先に発覚する可能性
上記の通り、役所は税金の滞納が続くと、納税者の財産差し押さえを検討します。
よくあるのが給与の差し押さえです。
役所は納税者の勤務先の会社に、給与の額や支払日等について照会書を送付して調査を行います(通常は、この時点で会社に税金滞納が発覚するでしょう)。
また、調査の結果、給与が差し押さえられてしまうと、会社は役所に対し、給与の一部を直接支払わなければならなくなり、さらなる事務負担を被ります。
会社に税金の滞納が発覚しただけでいきなり解雇されることはないでしょうが、信用を失い、会社に居づらくなってしまうこともあります。
税金にも時効はあります。税金の種類や状況によっても時効期間は異なりますが、多くの税金は、納付期限から5年を経過すると消滅時効が完成します。
しかし、近年では、時効で消滅しないように専門部署できちんと管理する役所も多くなりました。市民税を時効消滅させた場合に市長の監督責任を認めた裁判例(浦和地方裁判所平成12年4月24日判決)もありますので、役所が税金を「うっかり」時効により消滅させるような事態は今後まず生じないと想定した方が安全でしょう。
2.税金による給与差し押さえの範囲・金額
給与差し押さえが禁止される範囲(項目)・金額は、一般債権に基づく強制執行の場合と税金の徴収権に基づく場合とで全く異なります。
特に単身者の場合には、税金滞納による差し押さえにおいて(最低生活費の控除が少なくなって)多額の給与を差し押さえられることがありますので、注意が必要です。
国税徴収法第76条第1項は、給与の差し押さえ禁止の範囲及び金額について規定しています。
その給料等につき徴収される所得税に相当する金額
2号
その給料等につき特別徴収の方法によつて徴収される道府県民税及び市町村民税に相当する金額
3号
その給料等から控除される社会保険料に相当する金額
4号
最低生活費(生活保護法に規定する生活扶助の給付を行うこととした場合におけるその扶助の基準となる金額で給料等の支給の基礎となつた期間に応ずるものを勘案して政令で定める金額)
5号
その給料等の金額から前各号に掲げる金額の合計額を控除した金額の百分の二十に相当する金額(収入にふさわしい地位又は体面の維持に必要とされる費用・体面維持費)
4号の最低生活費については、以下の通りです。
生計を同じくする配偶者およびその他親族:~4万5000円×同居人数例)滞納者(本人)、妻、子供2人の場合
10万円+4万5000×3=23万5000円
また、5号の体面維持費の計算方法は以下の通りです。
※ただし、この20%相当分が最低生活費の2倍を超えてしまう場合には、その2倍までとなります。
差し押さえ禁止額の計算例は以下の通りです。
基本給 | 400,800円 |
---|---|
扶養手当、通勤手当等 | 50,000円 |
残業代 | 30,000円 |
総支給額の合計 | 480,800円(但し、1,000円未満切捨て) →480,000円 …① |
1号:所得税の額 |
---|
16,650円(但し、1,000円未満切上げ) →17,000円 …② |
2号:住民税の額 |
---|
25,000円(但し、1,000円未満切上げ) →25,000円 …③ |
3号:社会保険料の額 | |
---|---|
健康保険料 | 7,800円 |
厚生年金・雇用保険料 | 34,900円 |
合計 | 42,700円(但し、1,000円未満切上げ) →43,000円 …④ |
4号:最低生活費 | |
---|---|
滞納者(本人) | 100,000円 |
妻及び子供2人の場合 | 135,000円=45,000円×3(親族数) |
合計 | →235,000円 …⑤ |
5号:体面維持費 |
---|
32,000円 …⑥* *⑥=(①-②-③-④)×20%(但し、1,000円未満切上げ) |
差押が禁止される額 : 352,000円 …⑦=②+③+④+⑤+⑥
差押が可能な額 : 128,000円 …⑧=①-⑦
強制執行による給与差押え禁止の範囲については「給与差押え禁止の範囲」をご参照ください。
3.差し押さえ後に税金減免の交渉は可能?
給与などを差し押さえられると一気に生活が窮迫します。
差し押さえを受けた滞納者は慌てて「どうにかして差し押さえを解除してほしい」「税金の負担を軽くしてほしい」と思うことでしょう。
しかし、差し押さえは法律上の手続きに従ってなされるものですし、そもそも滞納を続けたことが差し押さえの原因なのですから、怒りをあらわにしたり、単に窮状を訴えたりするだけでは差し押さえを解除してもらうことはできません。
そうは言っても、税金を滞納してしまった事情・経緯は滞納者により様々でしょう。
中には、病気治療のためお金がない、仕事を解雇されてしまった、などのケースもあるかもしれません。
実は、法律上、一定の条件が存在すれば差し押さえを解いてもらえる場合があります。
地方税法第15条の7第1項第2号は、「滞納処分をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」に該当する事実があると認められる場合には、地方団体の長は、滞納処分の執行を停止することが「できる」と定めています。
滞納処分が停止されると、既に差し押さえがなされた場合にはその差し押さえを解除しなければなりません(地方税法第15条の7第3項)。
やみくもに窮状を訴えるのではなく、「生活を著しく窮迫させるおそれがあるときに該当する事実」を、資料をもとにして役所の徴税担当者に伝えるという誠意を示し、説明することが重要となるでしょう。
4.税金等は債務整理による債務減免の対象外
自己破産をすると、ほとんどの借金はゼロになります。
ところが、破産法253条1項1号は、「租税等の請求権」について免責許可の決定が確定したときでも責任を免れないことを明記しています。
また、個人再生においても、税金等の公租公課は全額を支払うことが前提であり、減額の対象とはなりません。
税金等の公租公課は、国や地方公共団体などの運営のために欠かせません。国の予算や国会議員の給与から、地方の様々な行政サービスまで、全て税金で運営されています。
ですから、税金は他の貸付債権等の一般債権よりも優先的に回収できるように、政策的に優遇された法的措置が定められています。
税金以外にも借金があって税金の支払いまでお金を回せない、というような場合は、専門家の力を借りて、その他の借金を債務整理することをおすすめします。
5.税金以外にも借金があるときはカヤヌマ国際法律事務所に
これまでご説明したとおり、税金を滞納することは、他の借金を滞納することよりも比べようもなくリスクが高いことは明白だと言えるでしょう。
税金は、放っておけば高率の延滞税もかさんでしまう上、勤務先へ調査が行く、財産を差し押さえられる等といった多大な不利益を被る可能性があります。
税金は自己破産しても免除されませんし、個人再生でも減額されません。
しかし、税金以外の借金を債務整理で解決することにより、税金支払いが可能になるかもしれません。
税金の滞納が続いて支払いが厳しくなってきたら、できるだけ早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。
カヤヌマ国際法律事務所は、債務整理事件を多数扱っております。
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