この記事では、個人再生で返済中に家計の変化があり、計画どおりの返済が難しくなった場合の解決方法について解説します。
個人再生の計画返済は3年かけて行うことなので、その途中で予期できなかった諸事情が生じ、計画返済の遂行が難しくなってしまうこともありえます。
最近では、新型コロナウイルスによる減収・失業なども問題となっていますので、お困りの方は是非ご覧ください。
1.個人再生後に返済が滞ったらどうなる?
再生債務者が再生計画の履行を怠ったときには、再生債権者の申立によって再生計画の認可が取り消される可能性があります(民事再生法189条1項2号)。
認可取消の申立に正当な理由があると認められれば、裁判所は「再生計画取消決定」をします。
再生計画が取り消されると、再生計画によって変更された条件がすべて元に戻ります(民事再生法189条7項)。
つまり、残っている借金を一括で返済しなければならない状態になってしまいます。
とは言え、勤務先や取引先の都合で予定した日に給与や報酬金が入らなかったり、家族の病気で急にお金が必要になったりするということもあり得ます。
債権者との信頼関係を壊さないためにも、延滞することが明らかなときには、債権者に対して事前に遅れる事情等について説明しておくことが重要です。
それまでの返済をきちんとしていれば、債権者も1回の延滞でいきなり「再生計画の取消」を申し立てるようなことはしないでしょう。
2.計画返済が難しくなったときの対応方法
突発的な事情で「今月の返済が間に合わない」ということであれば、債権者にその旨を連絡することで対応できます。
しかし、返済が厳しい状況が今後も続くことが予想されるときには、再生計画の取消を避けるためにも、速やかに対応措置を講じる必要があります。
2−1.再生計画の変更
再生計画の実行に行き詰まったときには、「再生計画の変更」が有力な対応措置となります。
2−1−1.「再生計画の変更」とは?
個人再生は、一定の条件を満たしていれば「再生計画で定められた債務の期限を延長する」ことが可能です(民事再生法234条第1項・244条)。
つまり、当初の返済計画よりも返済期間の先延ばしを認めてもらうことで、従前の延滞状態を解消し、支払期限の再調整と毎回の支払い額を減らすことができるというわけです。
(個人再生の再生計画の変更は、「再生計画のリスケジュール、支払期限の組み直し・再調整」などと呼ばれます。)
個人再生の場合の支払期限の延長は、再生計画で定められた最終の支払期限から2年を超えない範囲内に限られます。
つまり、個人再生の再生計画は3年での返済が原則なので、これを最大5年まで延長することが認められます。
2−1−2.再生計画変更の要件
再生計画の変更ができるのは、再生計画認可の決定があった後やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときです(民事再生法234条1項前段)。
「やむを得ない事由」とは、勤務先の都合(倒産など)、病気・ケガ、家族の介護を理由とする減収・失職や、取引先の倒産などが例として挙げられます。
近頃のコロナウイルスによる問題も、この「やむを得ない事由」に含まれるでしょう。
なお、これらの事情は、再生計画認可後に発生したものに限られます。
2−1−3.再生計画変更の流れ
再生計画の変更には、再生債務者の申立が必要です。
東京地裁の場合には原則として個人再生委員が選任されるため、その報酬(報酬額は事案ごとに決定)も負担する必要があります。
再生計画の変更手続においては、変更案に対する個人再生委員の意見書提出、債権者による書面決議(給与所得者等再生の場合には意見聴取)を経て、裁判所が認可・不認可の決定を下します。
裁判所を通す手続きになるので、可能ならば以前個人再生を依頼した弁護士に再度相談してみることをお勧めします。
民事再生法は、一定の条件を満たした場合に、再生計画の途中で「残債務を免責する」ことも認めています(民事再生法235条)。これを「ハードシップ免責」と呼んでいます。
ただし、ハードシップ免責は、次のすべての要件を満たしているときにのみ認められます(民事再生法235条1項各号)。
・再生債務者がコントロールすることのできない事情によって、再生計画を遂行することが極めて困難になったこと
・再生計画の変更が極めて困難であること
・これまでの返済総額が計画返済総額の3/4以上であること
・これまでの返済総額が清算価値以上の金額であること
このように、ハードシップ免責の要件は非常に厳しく設定されています。実際に利用できる可能性は極めて低いと考えるべきでしょう。
2−2.自己破産
再生計画の変更でも対応できないときには、「自己破産」を検討する必要があります。
自己破産は、税金などの特定の債務を除いた借金を全て免除してもらう手続きです。
その代わり、一定以上の債務者名義の財産は処分・換価され、債権者に配当されてしまいます。
なお、場合によっては「再度の個人再生」も可能ですが、あまり実益はないでしょう。
3.個人再生の申立ならカヤヌマ国際法律事務所へ
個人再生は、債務額を大幅に圧縮できることが大きなメリットとなる手続です。
他方で、3年で計画弁済を完遂しなければならないため、予期しないトラブルで返済計画に狂いが生じるリスクがあることは否定できません。
個人再生を弁護士に依頼する際には、「万が一の備え」として、再生計画認可後のアフターケアまで見据えて弁護士を選ぶことが大切です。
計画弁済を遂行できない可能性が出てきた場合、諦めて放置してしまったり、支払いのためにヤミ金などに手を出してしまったりすることは絶対にいけません。
正しく対応すれば、最後まで計画返済をやり遂げられることも少なくありません。
カヤヌマ国際法律事務所では、再生計画変更を取り扱った実績がありますので、安心して個人再生の手続をお任せいただけます。⇒「個人再生における計画弁済の途中で期間延長して再生計画を完了できた事例」
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